鉄道技術

2024年2月17日 (土)

研究誌『日本における自動空気ブレーキと「制御弁」のあゆみ』電子版を発行しました

研究誌 『日本における自動空気ブレーキと「制御弁」のあゆみ』 を「創作物の総合マーケット BOOTH」で頒布しておりましたが、おかげさまで初刷分が完売となりました。

つきましては新たに電子版を発行すると共に、冊子については増刷の手配をいたしました。冊子版については増刷に1週間程度掛かる見込です。

A4判、80ページ、白黒
1部600円です(送料別)

お求めは・・・
電子版: https://ooyasan.booth.pm/items/5506058  ・・・ すぐに購入可能です
冊子版: https://ooyasan.booth.pm/items/5190542  ・・・ 
出来上がりまで少々お待ちください。

 

自動空気ブレーキの制御弁について総合的にまとめた著作物は、専門書・趣味書を含めて国内では恐らく本誌が初めてと思われ、一般社団法人日本鉄道技術協会様よりも『類書がない』とのコメントを頂戴しております。

本誌をご覧いただければ、日本における自動空気ブレーキの技術史を概観していただけると思います。また、本誌を執筆するに当たって参考とした文献を巻末にまとめて紹介しており、関連の文献の、簡易なデータベースとしてもご利用いただけると思います。


表紙

Seigyoben_1

内容見本

 Seigyoben_2Seigyoben_3Seigyoben_4

 

 

目次
凡例

1.はじめに
2.総 論
   自動空気ブレーキの発明
   制御弁とは
   開発と改良
   制御弁のメーカー
3.二圧式制御弁 概論
   原理
   システムの基本的な構成
   基本的な構造
   基本的な作用
   主な欠点
3-1.M三動弁
   概要・開発
   構造
   作用
   細分形式
   適用ブレーキ方式・車種
3-2.P三動弁
   概要・開発
   構造
   作用
   細分形式
   適用ブレーキ方式・車種
3-3.6番分配弁(6番制御弁)
   概要
   開発
   構造
   作用
   適用ブレーキ方式・車種
3-4.14番分配弁(14番制御弁)
   概要・開発
   構造
   作用
   細分形式
   適用ブレーキ方式・車種
3-5.J三動弁
   概要・開発
   細分形式
   作用
3-6.U自在弁
   概要・開発
   細分形式
   適用ブレーキ方式・車種
3-7.K三動弁(K制御弁)
   概要・開発
   構造
   作用
   細分形式
   適用ブレーキ方式・車種
3-8.A動作弁(A制御弁)
   概要・開発
   構造
   細分形式
   作用
   適用ブレーキ方式と車種
3-9.F三動弁
   概要・開発
   構造
   細分形式
   作用
   適用ブレーキ方式・車種
3-10.C制御弁 Ⅰ
   概要・開発
   構造
   細分形式
   作用
   適用ブレーキ方式・車種
4.三圧式制御弁 概論
   原理
   システムの基本的な構成
   制御弁の基本的な構造
   制御弁の基本的な作用
   急ブレーキ作用
   急動作用
   弛め保証作用
   その他の特徴
   記号について
4-1.H制御弁(F制御弁Ⅱ)
   概要・開発
   構造・作用
   細分形式
   適用ブレーキ方式と車種
4-2.C制御弁Ⅱ、D制御弁Ⅱ
   概要・開発
   構 造
   作 用
   細分形式
   適用ブレーキ方式と車種
4-3.G制御弁
   概要・開発
   構造
   作 用
   細分形式
   適用ブレーキ方式と車種
4-4.KU制御弁
   概要
   開発
   構造
   作用
   細分形式
   適用ブレーキ方式と車種
4-5.KU1制御弁・KU2制御弁
   概要
   開発
   構造
   作用
   細分形式
   適用ブレーキ方式と車種
4-6.E制御弁
   概要
   開発
   構造
   作用
   細分形式
   適用ブレーキ方式と車種
4-7.EF制御弁
   概要
   開発
   構造
   作用
   適用ブレーキ方式と車種
5.その他、試作等
   B動作弁
   ブレーキ用新制御弁
   一般貨車用制御弁
   M非常弁
   Est 4dp制御弁
6.制御弁早見表
7.参考文献
8.あとがき

2023年10月28日 (土)

研究誌『日本における自動空気ブレーキと「制御弁」のあゆみ』を出版しました(頒布中)

以前、拙ブログにて連載しておりました「自動ブレーキと制御弁」は、しばらくお休みしておりましたが、大幅に増補改訂して冊子にまとめることとなり、この度、研究誌『日本における自動空気ブレーキと「制御弁」のあゆみ』として出版いたしました。

自動空気ブレーキの制御弁について総合的にまとめた著作物は、専門書・趣味書を含めて国内では恐らく本誌が初めてと思われ、一般社団法人日本鉄道技術協会様よりも『類書がない』とのコメントを頂戴しております。

博物館等へ寄贈した残部を「創作物の総合マーケット BOOTH」で頒布しておりますので、よろしければお買い求めください。
https://ooyasan.booth.pm/items/5190542
A4判、80ページ、白黒
1部600円です(送料別)

表紙

Seigyoben_1

内容見本

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目次
凡例
1.はじめに
2.総 論
   自動空気ブレーキの発明
   制御弁とは
   開発と改良
   制御弁のメーカー
3.二圧式制御弁 概論
   原理
   システムの基本的な構成
   基本的な構造
   基本的な作用
   主な欠点
3-1.M三動弁
   概要・開発
   構造
   作用
   細分形式
   適用ブレーキ方式・車種
3-2.P三動弁
   概要・開発
   構造
   作用
   細分形式
   適用ブレーキ方式・車種
3-3.6番分配弁(6番制御弁)
   概要
   開発
   構造
   作用
   適用ブレーキ方式・車種
3-4.14番分配弁(14番制御弁)
   概要・開発
   構造
   作用
   細分形式
   適用ブレーキ方式・車種
3-5.J三動弁
   概要・開発
   細分形式
   作用
3-6.U自在弁
   概要・開発
   細分形式
   適用ブレーキ方式・車種
3-7.K三動弁(K制御弁)
   概要・開発
   構造
   作用
   細分形式
   適用ブレーキ方式・車種
3-8.A動作弁(A制御弁)
   概要・開発
   構造
   細分形式
   作用
   適用ブレーキ方式と車種
3-9.F三動弁
   概要・開発
   構造
   細分形式
   作用
   適用ブレーキ方式・車種
3-10.C制御弁 Ⅰ
   概要・開発
   構造
   細分形式
   作用
   適用ブレーキ方式・車種
4.三圧式制御弁 概論
   原理
   システムの基本的な構成
   制御弁の基本的な構造
   制御弁の基本的な作用
   急ブレーキ作用
   急動作用
   弛め保証作用
   その他の特徴
   記号について
4-1.H制御弁(F制御弁Ⅱ)
   概要・開発
   構造・作用
   細分形式
   適用ブレーキ方式と車種
4-2.C制御弁Ⅱ、D制御弁Ⅱ
   概要・開発
   構 造
   作 用
   細分形式
   適用ブレーキ方式と車種
4-3.G制御弁
   概要・開発
   構造
   作 用
   細分形式
   適用ブレーキ方式と車種
4-4.KU制御弁
   概要
   開発
   構造
   作用
   細分形式
   適用ブレーキ方式と車種
4-5.KU1制御弁・KU2制御弁
   概要
   開発
   構造
   作用
   細分形式
   適用ブレーキ方式と車種
4-6.E制御弁
   概要
   開発
   構造
   作用
   細分形式
   適用ブレーキ方式と車種
4-7.EF制御弁
   概要
   開発
   構造
   作用
   適用ブレーキ方式と車種
5.その他、試作等
   B動作弁
   ブレーキ用新制御弁
   一般貨車用制御弁
   M非常弁
   Est 4dp制御弁
6.制御弁早見表
7.参考文献
8.あとがき

2023年3月 6日 (月)

自動空気ブレーキと制御弁⑬ B動作弁

自動空気ブレーキと制御弁、第13回目は、試作のみに終わった貨車用 B動作弁について解説します。

 

B動作弁

【概要・開発】 ※17

1928(昭和8年)年より貨車に本格導入されたK三動弁であるが、急ブレーキ作用が不確実、編成前後でのブレーキのタイミングずれによる大きな衝動の発生、緩解不良など少なからぬ不具合があり、これに代わるものとして1935年(昭和10年)2月より開発が開始された、貨車用の制御弁。

100両編成の貨物列車用として、組み合わせるUブレーキシリンダと共に完成し、性能試験までは行われたようであるが、その後戦時体制への移行に伴い、実用化される事なく終わった。

K三動弁・A動作弁の不具合点を改善すべく開発された制御弁と言えるが、実用化が中止されたのは、ゴムなどの資材の統制などによるものだけでなく、鉄道省内部から、当時の貨車用としては性能が過剰である、調達価格が高くなるなどの意見が強かった事もあったのではないかと思われる。

これによりK三動弁は、1992年(平成4年)にEA1制御弁を使ったCSD空気ブレーキ装置が採用されるまで、種々の問題を抱えながらも約60年間にわたって使い続けられる事になった。

但しこの弁の開発経験は、その後の膜板式制御弁に開発に生かされたものと思われる。

【構造・作用】 ※17

A動作弁の基本設計を元にした二圧式制御弁で、釣合滑り弁以外の弁は膜板(布入りゴム板)化している。

特長としては、

・常用ブレーキ後に非常ブレーキを掛ける事が可能(K)
・常用ブレーキ中に意図しない非常ブレーキは掛からない(A)
・常用・非常ブレーキには衝動が起こらない(K・A)
・ブレーキ・弛め作用が確実(K)
・込めは列車の前後部とも、迅速で確実(K)
・ブレーキシリンダの大きさにかかわらず、同一の弁を使用可能(K)
・釣合ピストン以外の弁を膜板化したため気密が良く、摺り合わせの手間を省ける(K・A)
・各弁の動く方向を枕木方向としてあり、列車の前後衝動が弁の動作に影響しない(K・A)
・釣合滑り弁は抵抗バネを持ち、ブレーキ管圧力の波動による盲動を抑制している(K・A)
・弁本体に配管を取り付けず、弁の着脱が容易(K)
・補助・付加・急動の3空気溜を一体化し、鋼板溶接構造としたため、小型軽量(約 23 kg)(K・A)

などで、(K)(A)はそれぞれ、K三動弁・A動作弁に対する(設計上の)改善点を示す。

【適用ブレーキ方式と車種】

(1) 貨車

BU

B動作弁とUブレーキシリンダを組み合わせた、一般貨車用空気ブレーキ装置。

2023年2月19日 (日)

自動空気ブレーキと制御弁⑫ A動作弁(その3)

「自動空気ブレーキと制御弁」 第12回は、国産の代表的な制御弁である「A動作弁」の3回目。A動作弁が適用されたブレーキ方式について、解説します。

 

【適用ブレーキ方式と車種】

(1) 客車

AV

昭和4年度から旧型客車の標準ブレーキとなったもので、オハ31系から10系客車まで広く採用された。形式の「A」はA動作弁、「V」はV形ブレーキシリンダを表す。

A動作弁・V形ブレーキシリンダ・補助空気溜・付加空気溜・急動空気溜・チリコシなどから構成され、A動作弁はブレーキシリンダの蓋にある取付座に取り付けられる。編成内の引き通しはブレーキ管のみ。緩急車には更に車掌弁・圧力計などが追加される。

V形ブレーキシリンダには直径305 mmと355 mmの2種類があり、車体重量などに応じて使い分けられたようだ。

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客車用AVブレーキ装置の主要部分。マロネフ59 1。2007年9月7日、交通科学博物館

現在も保存客車(動態・静態)で見ることができるが、JR西日本の保存車の中には、ブレーキシリンダはそのままでCLブレーキ装置に改造された車両もある(マイテ49など)

AS

20系固定編成客車に採用された自動空気ブレーキ装置で、床下の艤装の関係上ブレーキ引棒を引き通すことができないため、AVブレーキ装置を元に、SO形ブレーキシリンダを各台車枠に取り付けるように変更したもの。形式の「S」は、Separateか?

登場順からは、気動車用のDAブレーキ装置から空気源や運転台機器を取り去って、客車用に変更したものと言っても良いかも知れない。

編成内の引き通しはブレーキ管のみ。ブレーキシリンダはカニ22が180×150を8台、それ以外の電源車が203×250を4台、一般車は180×150を4台装備していた。 ※27

昭和43年10月ダイヤ改正での110km/h走行に向けて、全車がAREB形速度増圧付電磁自動空気ブレーキに改造され、姿を消した。

AREB ※27

20系客車の高速化に伴ってASブレーキ装置を改造した電磁自動空気ブレーキ装置。形式の「R」は中継弁(Relay valve)、「E」は電磁ブレーキ(Electromagnetic brake)、「B」はブレーキ率制御(brake-rate control)を表す。速度95 km/hを超えて運転する区間では、このブレーキ装置の使用が必須とされた。

後述のAREブレーキ装置を客車用とし、更に高速走行時のブレーキシューの摩擦係数低下を補正するための、速度増圧機構を追加したものと言える。その構造及び特徴は、

・管取付座(急動空気溜と作用空気室を内蔵)にA動作弁・複式中継弁・切替電磁弁と締切コックを取り付けて、C8Bブレーキ制御装置を構成する。

・複式中継弁はA動作弁からのブレーキ指令(作用空気室圧力)に応じて、供給空気溜の圧力空気をブレーキシリンダに給排する。

・中継弁の採用には、ブレーキ管圧力を上回るブレーキシリンダ圧力を設定できるほか、制輪子の摩耗や台車のバネのたわみでブレーキシリンダのピストン行程が伸びても一定のシリンダ圧力を確保できるなどの利点がある。

・中継弁の採用により急ブレーキ位置でブレーキ管圧力を吐き出す先が小容量の作用空気溜となるため、急ブレーキ作用によるブレーキシリンダ圧力の変動が大きくなる。そのためA動作弁の逆止弁の通路を塞いで、急ブレーキ作用を殺してある。

・補助空気溜と付加空気溜は二室空気溜として一体化されている。ブレーキシリンダの役割を小容量の作用空気室が果たすので、容量が小さくて済むためである。そのため又込めの時間が短く、階段緩めを小刻みに行うことができる。

・各車のブレーキ管から分岐してB電磁給排弁を設け、常用・非常ブレーキの際に機関車からの電気指令によりブレーキ管の圧力空気を吐き出して、各車同時にブレーキ管の減圧を行うようにした。

・緩急車と電源車にはA14-1電磁給排弁とE吐出弁を設けている。A14-1電磁給排弁は、ブレーキ弛めの際に機関車からの電気指令で、元空気溜管の圧力空気を直接ブレーキ管に込めて、ブレーキ管の増圧を編成内で同期的に、かつ迅速に行う。

・E吐出弁はA動作弁の非常部を独立させたようなもので、非常ブレーキ指令を速やかかつ確実に後続車に伝える役割を持つ。

・編成内にはブレーキ管、元空気溜管と、9芯のKE72ジャンパ連結器で、電磁ブレーキ・増圧関係の指令線が引き通される。

・時速40 km/h以上になると、機関車の速度検出器からの指令で、中継弁はブレーキシリンダ圧力を66倍に増圧する(最高7.5 kg/cm2

昭和46年度以降に、ブレーキ緩解不良の防止、ブレーキ性能の向上と保守の容易化を図るため、当時最新の3圧式KU1A制御弁への交換と、ブレーキ力補足装置の追加が行われ、昭和52年頃までに全車がCREB形速度増圧付電磁自動空気ブレーキに改造されたと思われる。

(2) 電車

AE

国鉄旧型電車標準の電磁自動空気ブレーキ装置で、モハ31系より採用されたものと考えられ、80系・70系を除く旧型電車全般に装備された。

動作弁・ブレーキシリンダ周りは客車用AVブレーキ装置と同じで、電動空気圧縮機・元空気溜・圧力加減器・給気弁などの空気源機器と、ME23ブレーキ弁・圧力計などの運転台機器を設けている。

更に各車に電磁吐出弁(常用・非常)を設け、ブレーキ指令を迅速化・同期化している。また平坦線区での運用を前提としたため、先頭車のみブレーキシリンダ圧力を保ちながらブレーキ管の込め直しを行う、保ち機能も持たない。

編成内にはブレーキ管・元空気溜管と、KE52ジャンパ連結器(補助)で、圧縮機同期・常用・非常の指令線が引き通される。

AMA

AMMブレーキ装置のM三動弁をA動作弁に置き換えたもので、私鉄用にWH式の呼称。主に第二次世界大戦後の吊掛駆動車に多く採用され、一部にはM三動弁やU自在弁からの更新もあった。また初期のカルダン駆動車でも採用されたものがある。

長編成化のため電磁ブレーキを付加したAMAE、中継弁を使用したAMAR、発電ブレーキと連動させたAMADなどもあった。

HSC

WH社により開発された、セルフラップの電磁直通ブレーキを主体に自動常用ブレーキの機能を併設するブレーキシステムで、High Speed Controlの略である。1932年に試作、1936年より実用化された。日本には1953年頃から導入され、私鉄車両に広く導入された。

発電ブレーキ併用のHSC-D、回生ブレーキ併用のHSC-Rなどがある。

日本では自動ブレーキ部にA動作弁を使用したものが多かったが、保守の厄介さや緩解不良の発生などから、後に非常弁に交換する事で常用ブレーキ機能を廃止し、更に非常ブレーキを電気指令化して自動ブレーキ部を無くす改造も行われた。

ARE ※28

AEブレーキ装置を改良した電磁自動空気ブレーキ装置。

1938年(昭和13年)10月に東京鉄道局で第一次現車試験、翌1939年に第二次現車試験が行われ、1941年には試作が完了した模様。元々10両編成用に計画されたが、15両編成対応のため弛め電磁弁を追加して、モハ80系湘南形電車で実用化された。他に70系電車にも採用された。

その構造及び特徴は、

・中継弁管取付座(急動空気溜と作用空気室を内蔵)にA動作弁・A中継弁を取り付けてある。

・A中継弁はピストン滑り弁式で、A動作弁からのブレーキ指令(作用空気室圧力)を受けて、供給空気溜の圧力空気をブレーキシリンダに給排する。

・各車のブレーキ管から分岐して電磁吐出弁を設け、常用・非常ブレーキの際にブレーキ弁からの電気指令によりブレーキ管の圧力空気を吐き出して、各車同時にブレーキ管の減圧を行う。

・制御車には電磁弛め弁を設けている。ブレーキ弛めの際にブレーキ弁からの電気指令で、元空気溜管の圧力空気を直接ブレーキ管に込めて、ブレーキ管の増圧を編成内で同期的に、かつ迅速に行う。

・ブレーキシリンダは、電動車は新設計の355×250S形、制御車・付随車には同じく254×250S形が、台車別に車体装荷で2台ずつ設けられている。

・編成内にはブレーキ管、元空気溜管と、KE53ジャンパ連結器(補助)で、圧縮機同期・常用・非常・弛めの指令線が引き通される。

SE

モハ90(101系)以降の国鉄新性能電車に標準として使用された、電磁直通空気ブレーキ装置。「SE」で電磁直通ブレーキを表す。基本的にはWH社のHSCブレーキ装置そのもので、国鉄はWH社にライセンス料を払って導入したとの事である。

バックアップとなる自動ブレーキ部にA動作弁が使われている。本質的には中継弁付自動空気ブレーキ装置であり、電磁吐出は持たない。これは自動ブレーキ部の用途が列車分離などの際の保安、留置や運転台交換時などの転動防止、無動力回送などが主であり、比較的俊敏性を必要とされないためではないかと思われる。

発電ブレーキ付きのSEDが基本で、

・SE: 発電ブレーキなし

・SELD: 応荷重機能付で、応荷重弁が追加されている。「L」は Load controlを表す。

・SEBD: 特急電車の120 km/h運転用に、速度増圧付きとしたもの。中継弁をJ16型に変更し、自動ブレーキの場合にブレーキシリンダ圧力を約1.6倍に増圧する。

などがある。

初期のブレーキ制御装置は、電動車用は管取付座(急動空気室内蔵)にA動作弁・A中継弁・複式逆止弁・D圧力調整弁・締切電磁弁を取り付けたC1A、制御車・付随車用はD圧力調整弁と締切電磁弁を省略したC2が使用された。

JR西日本の113系・115系、JR九州の415系1500番台などで残存する。

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415系1500番台に搭載されたA動作弁(黄丸内) 2021年10月21日 鹿児島本線久留米駅

(3) 気動車

DA ※29

客車用AVブレーキ装置を基本に空気源及び運転台機器追加した、ディーゼル動車用の標準ブレーキ装置。「D」はディーゼル動車用を表す。

1952年のキハ44000形電気式気動車を最初に、キハ45系までに一般型気動車とキハ56系・58系急行形気動車に採用された。また国鉄最末期のキハ32・キハ33・キハ54の各形式にも、廃車発生品利用の形で採用された。

A動作弁は管取付座(急動空気溜を内蔵)に取り付けられ、運転台付車では弛め管がブレーキ弁まで配管され、保ち作用を可能にしている。床下艤装の関係でブレーキ引棒を引通せないため、ブレーキシリンダは前後の台車別に設けられており、車体装荷式の254×250形となっている。これは80系電車の制御車・付随車用と同一品であると思われる。

運転台機器はME23Dブレーキ弁・釣合空気溜・圧力計・B6圧力調整弁・D吐出弁・車掌弁など、空気源は空気圧縮機・元空気溜・S17調圧器・C電磁給排弁などで構成され、2台機関の形式では空気圧縮機も2台になる。編成内にはブレーキ管・元空気溜管と圧縮機同期回路が引き通される。

運転台の有無により、次の3つの細分形式がある。

DA1

片運転台車用のブレーキ装置。

DA1A

両運転台車用のブレーキ装置。弛め管に、弛め管切替弁乙が追加されており、逆転器の指令に連動して弛め管を進行方向前側のブレーキ弁につなぐ。

DA2

運転台なし車用のブレーキ装置で、DA1ブレーキ装置から運転台機器を取り去ったもの。但しキロには、車掌弁が設けられる。

DAR※29

キハ57・キロ27に採用されたブレーキ装置で、ラックレール区間を通過するため基礎ブレーキ装置をディスクブレーキに変更したのに伴い、DAブレーキ装置を中継弁式とし、ブレーキシリンダを増圧シリンダに変更したもの。

A動作弁はA中継弁と共にAA管取付座(急動空気溜を内蔵)に取り付けられ、C2Aブレーキ制御装置を構成する。他の中継弁式ブレーキ装置と同じく、二室空気溜と作用空気溜が付属する。

作用については、AREブレーキ装置と基本的に同じ。

DARS ※30・31

80系特急形気動車に採用されたブレーキ装置で、AREブレーキ装置を基本に電磁速動付きにしたもの。「S」はSpeed driveの頭文字ではないかと思われる。

電磁速動ブレーキ装置は、電磁直通ブレーキに近い性能を持ち、かつ低コストのブレーキ装置として、日本エヤーブレーキが開発したもので、1958年度(昭和33年度)よりの国鉄の技術課題として、クハ76・モハ71で試験が行われた。

A動作弁はA中継弁・切替弁・中間体・電磁弁(ブレーキ・弛め)と共に管取付座(急動空気溜を内蔵)に取り付けられ、C3ブレーキ制御装置を構成する。DARブレーキ装置と同じく基礎ブレーキ装置はディスクブレーキのため、ブレーキシリンダは増圧シリンダとなっている。ブレーキ弁はME23Sで、DAブレーキ装置のME23Bとは電気部接点の構成が異なる。

制御弁の空気指令とは別に、電磁弁の指令により切替弁を動作させ、バイパス通路を開閉してブレーキシリンダへの給排気を行う。具体的には、

・ブレーキ時には、補助空気溜の圧力空気を直接ブレーキシリンダに送る

・弛め時は、ブレーキシリンダの圧力空気を、A動作弁を通じて排気する

ようになっており、小刻みなブレーキの掛け弛めができて、込め時間も不要となっている。

ブレーキ時には、ブレーキ管はブレーキ弁により減圧されるが、その前に補助空気溜圧力もブレーキシリンダへの給気によって低下しているため、A動作弁は常に弛め位置を取っている。非常ブレーキは、ブレーキ管の減圧により指令が行われる。

DAE

急行形気動車の編成が長大になるに従って、従来のDAブレーキ装置ではブレーキ指令の遅れが大きくなったため、1962年度(昭和37年度)の第5次急行用(キハ58 401~など)以降に採用された電磁自動空気ブレーキ装置。

DAブレーキ装置に弛め用のA14-4電磁給排弁・ブレーキ用のC13-4A電磁給排弁を設け、ブレーキ弁を、電気接点を追加したME23Bに変更した。指令線にはブレーキ・弛めの2線を追加し、2芯のKE67ジャンパ連結器、または19芯のKE53Cジャンパ連結器(冷房車)で編成内を引き通す。

キハはDAE1、キロはDAE2となる。

なお1965年度(昭和40年度)の本社特別修繕費工事で、第4次急行用までの車両についても、DAからDAEに改造する長大編成化工事が行われた。

DARE1

キハ65に採用されたブレーキ装置で、DAR1ブレーキ装置に電磁給排弁などを追加したもの。ブレーキ制御装置はC2A。

同期の181系特急形気動車は三圧式のC制御弁を採用し、12系客車は最新のKU制御弁を採用したが、本形式は従来の気動車との混結を前提としたため、引き続きA動作弁の採用となった。

(4) 貨車

AD ※32・33

1960年(昭和35年)製作のチキ5500形長物車(コンテナ専用)に採用されたブレーキ装置で、手動式の積空切替装置を持っていた。

A動作弁は管取付座(急動空気溜を内蔵)に取り付けられ、補助空気溜・付加空気溜・254-356×300差動ブレーキシリンダ・H積空切替弁により構成される。他に一方の台車の枕バネの撓みをテコで伝達して指針で表示する、積空表示装置を備えている。

ブレーキ力の切替は、差動ブレーキシリンダの有効面積の切替で行う。

KSDブレーキ装置に先立つ積空切替式ブレーキ装置であるが、登場当初より取扱い誤りや、積空表示装置の指示の曖昧さ、偏積への対応の困難さが指摘されており、結局は後のKSDブレーキ装置やASDブレーキ装置で、切替の自動化が行われる事になった。

ASD #34

ADブレーキ装置の改良版で、P切替弁によって積空切替えを行う。製造年次や用途によって以下の細分形式がある。
なお差動ブレーキシリンダでは積車と空車でシリンダ容積が異なるため、最大限圧量が一定しない欠点がある。

手動切替式

コキ5500形コンテナ車の1960~1965年度(昭和35~40年度)製造車に採用されたもので、積空切替はADブレーキ装置と同じく手動式。但し付加空気溜が省略されたため、階段緩めはできない。これは当時、コンテナ専用列車はわずかで、一般貨車との混結での運用を前提としたためであろう。

A動作弁は管取付座に積空切替用のP切替弁とU2切替弁と共に取り付けられ、U2切替弁を操作する事でP切替弁の空気通路が切り替わる。ブレーキシリンダは254-365×300差動ブレーキシリンダである。

1969年度(昭和44年度)以降、順次自動切替式に改造された。

自動切替式

コキ5500形コンテナ車の、1966年度(昭和41年度)以降、1969年製のコキ8539に至るまで採用されたもので、荷重検知器を追加して自動切替式となった。但しU2切替弁も残されており、荷重検知器が故障した時、積空動作を検査したい時などは、手動で切り替える事もできた。

なお基礎ブレーキ装置の抵抗が大きく、空車時におけるブレーキ管の最小減圧ではブレーキ作用が起こらない事象が発生したため、差圧逆止弁を追加して空車時のブレーキシリンダ圧力を増加させる改造が、後に行われている。 ※35

勾配線区用

付加空気溜を追加して、階段緩めを可能としたもの。ホキ2500・8500・9500形石灰石専用車、タキ8400・8450形アルミナ専用車、ホキ5500形セメント専用車などに採用された。積空切替は自動式である。 ※6

なおホキ2500形では、積空で最大限圧量が異なる欠点を補正するため、荷重検知器の指令空気圧を使って補助空気溜の容積を切り替える機能が、後に追加された。 ※36

その他レサ5000形・ワキ5000形(6234まで)でも採用されたが、変遷はコキ5000形に準じるものと思われる。

ARSD #34

1969年度(昭和44年度)以降に製作されたコキ5500形(8540以降)やワキ5000形(6235以降)に採用されたもので、中継弁によって直接ブレーキシリンダ圧力を二段階に変化させる方式の積空ブレーキ装置。付加空気溜を持たず、階段緩めはできない。

A動作弁は管取付座(急動空気溜を内蔵)に取り付けられ、別にJ105中継弁・U2切替弁・差圧逆止弁を取り付けた管取付座を2組備える。動作弁には二室空気溜が付属するが、補助空気溜と作用空気溜との組み合わせになっている。また中継弁用に、供給空気溜が新設された。ブレーキシリンダに代わって、290×100ブレーキダイヤフラムが台車毎に設けられている。

なおコキ8545~8554は、中継弁及びブレーキダイヤフラムは各1台のみとなっている。

後年、TR216台車付車で 95 km/h走行用に改造(コキ45500番台化)された車両は、制御弁をEA制御弁に交換して、CRSDブレーキ装置となった。 ※37

ALD ※38

50000系コンテナ貨車の試作版である、コキ9200形コンテナ車に採用されたブレーキ装置で、2両のみの試作であったところから、A動作弁に応荷重制御を付加するという変則的なものとなった。

仕組みとしては、ARSD方式(コキ8540~)の荷重検知器とJ105中継弁を、測重弁とU応荷重弁に置き換えたものである。付加空気溜を持たず、階段緩めはできない。

(5) 機関車

AMA:

A動作弁は、私鉄の電気機関車でも用いられた。資料的には、上信電鉄のデキ1・ED316が該当する。 ※8

2023年2月 5日 (日)

自動空気ブレーキと制御弁 ⑪ A動作弁(その2)

「自動空気ブレーキと制御弁」 第11回は、国産の代表的な制御弁である「A動作弁」の2回目。A動作弁の種類と作用について、解説します。

 

A動作弁

【種類】

構造で述べたように、動作弁取付座の空気通路に取り付ける絞り栓と、補助空気溜・附加空気溜の容量を変更することで、305 mmと355 mmの2種類のブレーキシリンダに対応できる。そのため細分形式はない。

昭和13年4月より、非常ブレーキ後に弛めが可能になるまでの時間を短縮する(約12秒 → 3~5秒)改良が行われたが ※26、それに伴う形式の変更は行われていない。

【作用】 ※26

最初の込め

各空気溜やブレーキシリンダに圧力空気がない時に、ブレーキ管に圧力空気を込めた時に取る位置で、各空気溜に圧力空気を込める。

釣合ピストン・非常ピストンはそれぞれのピストン室にブレーキ管からの圧力を受けて、滑り弁室側に押し込まれ、圧力空気は補助空気溜・附加空気溜・急動空気溜に込められる。その時、附加空気溜へ送られる空気の一部は高圧弁を閉塞し、附加空気溜への空気がブレーキシリンダに漏れ込むのを防ぐ。

各空気溜が所定の圧力に込められると、逆止弁及び球弁はその座に落ち着いて状態を維持する。

又込め及び弛め

一度減圧したブレーキ管に圧力空気を込める時に取る位置で、各空気溜に圧力空気を込めると共に、釣合度合弁及び釣合滑り弁によりブレーキシリンダの圧力空気を排出して、ブレーキを弛める。

基本的には最初の込めと同じ作用を行うが、附加空気溜の圧力空気も補助空気溜に込められ、込め時間の短縮を図っている(急又込め)

また急動空気溜への空気通路を絞って、補助空気溜と附加空気溜を優先的に込めるようになっている。

急ブレーキ位置

ブレーキ管圧力を比較的緩やかに減圧した時に取る位置で、ブレーキ管の局部減圧を行って後部車両へのブレーキ指令の伝達を促進する(急ブレーキ作用)と共に、常用ブレーキを掛ける。

釣合部では、

1. ブレーキ管の減圧によりピストン室の圧力が減少すると、ピストンはまず釣合ピストン棒と釣合度合弁との隙間(3 mm)だけ移動し、込め溝を塞いで補助空気溜からブレーキ管へ圧力空気が逆流するのを防ぎ、ブレーキ管の減圧を確実にする。

2. その後釣合ピストンは、釣合滑り弁と釣合度合弁を伴って更に動き、度合弁バネに突き当たって止まる。

3. この時急動逆止弁の背面は、釣合滑り弁・釣合度合弁によってブレーキシリンダに通じるので、ブレーキ管の圧力空気は逆止弁を開いて、一部がブレーキシリンダに流入する。これによりブレーキ管の局部減圧を行う。

また釣合滑り弁の通路が開いて、補助空気溜の圧力空気がブレーキシリンダに送られる。

非常部においては、

1. ピストン室の圧力が減少するので、滑り弁室の圧力により球弁は座に落ち着き、ピストンは非常度合弁を伴って、非常度合弁バネに突き当たるまで移動する。

2. この時非常滑り弁と非常度合弁の穴が合致して、ピストン背面及び急動空気溜の圧力空気は徐々に大気に放出される。そのため非常ピストンは非常度合弁バネに突き当たった位置で止まったままとなる。

3. この時非常滑り弁は動かないので、非常ブレーキ作用は行われない。

全ブレーキ位置

急ブレーキ位置と比べてブレーキ管の減圧が早い場合に取る位置で、常用ブレーキを掛けるが、急ブレーキ作用は行わない。

釣合部では、

1. ピストン両面の圧力差が大きいため、ピストンは度合弁バネを圧縮し、急ブレーキの位置を通り越して極端まで動く。

2. この時逆止弁背面への通路は釣合滑り弁で塞がれるため、ブレーキ管の圧力空気はブレーキシリンダへ流入しない。

3. また急ブレーキ位置と同じく釣合滑り弁の通路が開いて、補助空気溜の圧力空気がブレーキシリンダに送られる。

非常部の動きは、急ブレーキ位置の場合と変わらない。

ブレーキ重なり位置

ブレーキ管の減圧を止めた時に取る位置で、ブレーキシリンダ圧力をその時の状態に維持する。

釣合部では、

1. ブレーキ管の減圧が止まってその圧力が一定になっても、補助空気溜の圧力空気はブレーキシリンダに流入し続ける。

2. その結果、釣合滑り弁室圧力(補助空気溜圧力)がピストン室圧力(ブレーキ管圧力)よりも幾分低くなると、釣合ピストンは釣合度合弁を伴って、釣合滑り弁に当たるところまで戻る。

3. この時、各空気通路は閉鎖されて、ブレーキシリンダ圧力は一定に保たれる。

4. また補助空気溜から釣合滑り弁抵抗溝への通路が開き、滑り弁の摺動抵抗を減らして、次の弛め作用を確実にするよう準備される。

なお補助空気溜とブレーキシリンダとの容積比は凡そ3.25対1に設計されている。このため最初490 kPa(5.0kg/cm2に込められたブレーキ管圧力を137 kPa(1.4kg/cm2減圧すると、補助空気溜圧及びブレーキシリンダ圧力は353 kPa(3.6 kgf/cm2となって釣り合う。これを最大減圧量と言い、それ以上の減圧は無効となる。

非常部においては、ブレーキ位置では非常ピストン背面(急動空気溜)の圧力空気が徐々に排出されているが、ブレーキ管の減圧が止まって一定になると、ピストン背面の圧力の方が低くなって、ピストンは滑り弁室側に押し込まれる。これにより急動空気溜圧力は、その時のブレーキ管圧力と釣り合う。

弛め重なり位置

弛めの途中でブレーキ管の増圧を止めた時に取る位置で、各空気溜への圧力空気の込めを停止すると共に、ブレーキシリンダ圧力をその時の状態に維持する。

釣合部では、

1. ブレーキ管の増圧が続く内は弛め位置を取るが、増圧が止まって圧力が一定になっても、附加空気溜の圧力空気は補助空気溜に流入し続ける。

2. その結果、釣合滑り弁室圧力(補助空気溜圧力)が釣合ピストン室圧力(ブレーキ管圧力)よりも幾分高くなると、釣合ピストンは釣合度合弁を伴ってピストン室側へ移動し、釣合滑り弁に当たって止まり、各空気通路を閉鎖する。

非常部においては、ブレーキ管の増圧に伴い非常ピストンは押し込まれて急動空気溜を込めるが、ブレーキ管と急動空気溜の圧力が釣り合った時点で非常ピストンの両面の圧力が釣り合い、球弁が座に落ち着いて、急動空気溜への込めも止まる。

弛め重なり位置において再びブレーキ管圧力が上昇すると、釣合部は再び弛め位置を取り、上昇が止まればまた弛め重なり位置を取る。このようにして、附加空気溜の圧力とブレーキ管圧力が釣り合うまでは、段階的にブレーキを弛めることができる(階段弛め)

非常ブレーキ位置

ブレーキ弁や車掌弁からの非常ブレーキ指令、ブレーキ管の破損や列車の分離などで、常用ブレーキよりも早い速度でブレーキ管の減圧が行われた時に取る位置。

釣合部は全ブレーキ位置と全く同じ作用を行う。但しピストンの動きは、常用ブレーキよりも早く行われる。

非常部では

1. まず非常ピストンが非常度合弁を伴って動き、常用ブレーキ位置を取るため、急動空気溜の圧力空気が排出される。

2. この時ブレーキ管圧力の降下の方が早いので、ピストンの非常滑り弁側の圧力が高まり、ピストンは非常度合弁バネを押し込んで全ブレーキの場合よりわずかに多く移動する。

3. それにより非常度合弁は非常滑り弁の穴を開いて、急動空気溜の圧力空気を急動部の逃しピストン下部に送る。その圧力空気により逃しピストンは押し上げられ、逃し弁を開くので、ブレーキ管の圧力空気は急動部の吐出穴から大気中に放出され、ブレーキ管を急激に減圧する(急動作用)

4. ブレーキ管の急激な減圧は非常部に伝わり、非常ピストンは非常度合弁バネを大きく押し込んで極端まで移動し、非常度合弁及び非常滑り弁に非常位置を取らせる。

5. すると非常滑り弁によって高圧弁背面の圧力空気が大気に放出されるので、高圧弁下部に作用する附加空気溜圧力はバネに打ち勝って高圧弁を開き、附加空気溜の圧力空気はブレーキシリンダに送られる。

6. この時、補助空気溜と附加空気溜の圧力空気が合わさって、ブレーキシリンダ圧力は約441 kPa (5 kgf/cm2まで上昇する。

更に各弁の動作を確実にするために、並行して以下の作用が行われる。

・ 急動空気溜圧力が逃しピストンの下部に送られ、逃しピストンの開きを保つ。

・ 附加空気溜圧力が非常ピストンの背面に導かれ、ピストンの位置を保つと共に、ピストン背面の圧力がブレーキ管に漏れ込むのを防ぐ。

・ 同じく釣合ピストンの位置を保つと共に、ピストン背面の圧力がブレーキ管に漏れ込むのを防ぐ。

・ 逆止弁を弁座に付けて、ブレーキシリンダ圧力がブレーキ管に漏れ込むのを防ぐ。

逃しピストンに作用した空気はピストンにある穴及び逃し溝を通じて、約3~5秒で排出されるので、逃し弁バネにより逃しピストンと逃し弁は押し下げられて元の状態に戻り、非常ブレーキ後の弛めを可能にする。

(第12回へ続く)

2023年1月31日 (火)

自動空気ブレーキと制御弁 ⑩ A動作弁(その1)

「自動空気ブレーキと制御弁」 第10回よりは、国産の代表的な制御弁である「A動作弁」について、複数回に分けて解説します。

A動作弁

【概要・開発】 ※3・17

国産初の旅客車用制御弁で、1960年代以降の文献では「A制御弁」と呼ばれるが、本稿では原則として「A動作弁」に統一する。

鉄道省は自動空気ブレーキを導入するに当たり、客車用には1921年(大正10年)2月よりWH社のPM形(P三動弁)、1923年(大正12年)5月よりクンツェ・クノール社(ドイツ)の客車用P形三動弁、1924年(大正13年)にはWH社の電車用MN形(M-2-C三動弁)、更にWH社のU-5自在弁の試験を行ったが、いずれも採用にならなかった。

その結果、1927年(昭和2年)に至って鉄道省工作局が主幹となって日本の鉄道車両に適した三動弁を開発することになり、日本エヤーブレーキと三菱電機に設計を依頼し、日本エヤーブレーキの案を採用して1928年(昭和3年)8月に正式化されたのがA動作弁である。

A動作弁について解説した文献ではU自在弁を簡略化して(新たに)開発したとするものが多いが、後述するように、WH社のL三動弁(1907年開発)を元にU自在弁の一部機能を盛り込んで改良設計した可能性があり、純粋な国産の制御弁とは言い難いところがある。

鉄道省では、電車には1928年(昭和3年)7月より採用。客車には1929年(昭和4年)5月より取付けを始め1931年(昭和6年)7月までに完了した。気動車には1931年のキハニ36450形より採用。更に一部の大型貨車にも採用され、昭和の初期から30年代に至るまで、国鉄の旅客車はほぼ例外なくA動作弁を搭載していると言っても過言ではない状況であった。私鉄でも電車では1960年代まで、また一部では気動車や電気機関車にも採用された。

1965年(昭和40年)までに次世代の制御弁が開発されてからも、既存形式の増備に当たってはなおA動作弁が採用され続け、廃車発生品の流用ながら、結局は国鉄最後の新製形式キハ31・キハ32・キハ54に至るまでこの弁を採用した。

開発より100年近くになり、最新世代の制御弁や電気指令式ブレーキへの移行により、流石にその数を大幅に減らしているが、現在もなおJRの電車では103系(0番台)・113系・115系・415系、気動車ではキハ32・キハ54(0番台)、貨車ではレール輸送用のチキ5500・チキ6000、私鉄では小湊鐵道キハ200形(一部)などに残存している。

 

【構造】 ※1・4・7・26

ブレーキ管圧力と補助空気溜圧力の関係によってブレーキシリンダ圧力を制御する二圧式制御弁で、金属ピストンを使用した滑り弁式の制御弁である。非常ブレーキの制御を非常部として独立させたのが大きな特徴。材質は鋳鉄製で、重量は約27kg。

釣合ピストンがレール方向になるように取り付けられるのが元々であるが、新性能電車以降のブレーキ制御装置では90度回して枕木方向に取り付けられるようになった。これは、加減速による衝動によって釣合ピストンが無用な動きをしないようにするための対策であると思われる。

従来の三動弁と同じく補助空気溜・附加空気溜とブレーキシリンダが付属するほか、非常ブレーキ制御用の急動空気溜が追加された。

C1-brake-controller
新性能電車用C1ブレーキ制御装置に組み込まれたA動作弁。下の分解図に近い角度での撮影。クモハ101-902。2007年10月24日、鉄道博物館

A-control-valve_structure
A動作弁分解図 ※26

1.非常滑弁室蓋                 2.釣合弁室                          3.釣合滑弁ブシュ               4.釣合滑弁室蓋
5.高圧弁蓋                       6.逆止弁蓋                          7.非常シリンダ蓋                8.釣合シリンダ蓋
9.釣合シリンダ蓋詰座          10.釣合度合棒                      11.釣合度合バネ                 12.釣合ピストンブシュ
13.逃し弁                         14.逃し弁座                          15.逃しピストン蓋               16.逆止弁蓋
17.球弁                           18.非常度合バネ                   19.非常度合棒                   20.非常シリンダ蓋
21.非常シリンダ蓋詰座        22.非常ピストンブシュ            23.非常ピストン                 24.非常滑弁室
25.非常滑弁                     26.非常滑弁バネ                   27.非常滑弁室蓋               28.高圧弁座
29.高圧弁                        30.高圧弁バネ                      31.高圧弁室ブシュ              32.高圧弁蓋詰座
33.高圧弁蓋                     34.非常ピストン                    35.非常ピストン棒              36.非常度合弁
37.非常滑弁                     38.釣合ピストン                    39.釣合度合弁                  40.釣合滑弁


釣合部

釣合部は弁の中段に位置し、水平に置かれた釣合ピストンと、それによって駆動される釣合滑り弁・釣合度合弁・逆止弁・釣合度合バネなどによって構成され、弛め及び込め・急ブレーキ・全ブレーキ・ブレーキ重なり・弛め重なりと言う、常用ブレーキの機能を担う。また非常ブレーキの際は、非常部と共にブレーキ作用を行う。

1. 釣合ピストン

ピストンの両側にはブレーキ管と補助空気溜の圧力が作用し、それらの圧力差によって駆動される。そしてその動きにより釣合滑り弁及び釣合度合弁がそれぞれの弁座を摺動し、各種空気通路を連絡・遮断する。また釣合ピストンの下部には込め溝があり、ピストンによって開閉される。

2. 釣合滑り弁

釣合ピストンによって動かされ、以下の空気通路を構成する。
・ 附加空気溜 ~ 補助空気溜へ
・ ブレーキ管 ~ ブレーキシリンダ
補助空気溜 ~ ブレーキシリンダ
ブレーキシリンダ ~ 大気

また摺動面には抵抗穴という細長い凹みが設けられており、ブレーキ時にはこの中の空気を排出して弁座との間の摩擦抵抗を増し、ブレーキ管圧力の細かな変化により弁が無用に動くことを防ぐ。逆に弛めの際は抵抗穴に圧力空気を込めることで摩擦抵抗を減らし、弛め不良を防ぐ。

3. 釣合度合弁

釣合ピストンによって動かされ、以下の空気通路の連絡を行うほか、前記の釣合滑り弁抵抗穴への空気の給排を行う。
附加空気溜 ~ 補助空気溜
補助空気溜 ~ ブレーキシリンダ
ブレーキシリンダ ~ 大気
ブレーキ管 ~ ブレーキシリンダ

4. 逆止弁

急ブレーキ作用の際に、ブレーキ管圧力空気の一部をブレーキシリンダに込める。

5. 度合弁バネ

急ブレーキ作用と全ブレーキ作用の区別を行うと共に、全ブレーキや非常ブレーキの際に、釣合ピストンが釣合シリンダ蓋詰座に突き当たる際の緩衝器となる。

非常部

非常部は弁の上部にあり、釣合部と直交する形に設けられている。水平に置かれた非常ピストンと、それによって駆動される非常滑り弁・非常度合弁・球弁・非常度合弁バネなどによって構成される。また釣合部の横に、直交するように高圧弁を備える。

1. 非常ピストン

両面にはブレーキ管と急動空気溜の圧力が作用し、その圧力差でピストンが駆動される。常用ブレーキの時は非常度合弁バネに当たるまで、非常ブレーキの時は大きな圧力差により非常度合バネを圧縮して極端まで動き、常用ブレーキと非常ブレーキの区別を行う。

2. 非常滑り弁

非常ブレーキの時以外は込め位置にあり、急動空気溜と滑り弁室を連絡すると共に、附加空気溜の圧力空気を高圧弁の背後に作用させて、附加空気溜とブレーキシリンダとの連絡を遮断している。非常ブレーキの時は、次の連絡を行う。
・ 急動空気溜 ~ 逃しピストン室
・ 高圧弁背面 ~ 大気
・ 附加空気溜 ~ 非常滑り弁室

3. 非常度合弁

常用ブレーキの時は急動空気溜の空気を大気に排出してピストン両面の圧力差を小さくし、非常ピストンが非常位置まで行かないように阻止する。非常ブレーキの時は非常滑り弁が動き出す前に、急動空気溜の空気を逃しピストンに送る。

4. 非常度合弁バネ

常用ブレーキの時に、非常ピストンが非常位置まで移動しないようにする。

5. 球弁

ブレーキ管減圧の際に急動空気溜の空気が逆流しないようにする逆止弁である。

6. 高圧弁

非常滑り弁によってこの弁の背面の空気が排気されると、附加空気溜の圧力空気によって押し上げられ、附加空気溜とブレーキシリンダを連絡する。

急動部

弁の下部にあって、縦型に設けられた逃しピストン・逃し弁などから構成される。非常ブレーキの時のみ、急動空気溜からの圧力空気により作用して、ブレーキ管の圧力空気を大気に排出する。

 

L三動弁とは外観や基本的な弁の配置がよく似ており、A動作弁を開発する際の元となった可能性が大きい。但し以下のような相違はある。 ※1

1. L三動弁は従来の三動弁と同様、対応するブレーキシリンダのサイズ別に設計されていたが、A動作弁ではU自在弁にならって取付座の空気通路に絞り栓を設けることで、複数のサイズのブレーキシリンダに同一の動作弁で対応できる。(L三動弁では、L-1-B: 8・10 in用、L-2-A: 12・14 in用、L-3: 16・18 in用)

2. A動作弁では、釣合滑り弁に抵抗穴が設けられ、滑り弁の意図しない動きを抑制する対策が行われた。

3. L三動弁では非常ブレーキ関係の弁の駆動も補助空気溜圧力によって行うが、A動作弁では独立した急動空気溜の圧力空気で行う。

4. 常用ブレーキと非常ブレーキとの区別は、L三動弁では常用ブレーキと同じ釣合部で行うのに対し、A動作弁では独立した非常部で行う。

5. 弁上部の非常ピストンは、L三動弁ではバイパスピストンとなっており、非常ブレーキ時に補助空気溜圧力により駆動されて、附加空気溜の圧力空気をブレーキシリンダに送るのみの機能となっている。一方A動作弁では非常部として、非常ブレーキの制御を担う。

6. 弁下部の逃しピストンは、L三動弁では非常ピストンと呼ばれる。非常ブレーキ時に補助空気溜の圧力で押し下げられて非常弁を開き、ブレーキ管の圧力空気をブレーキシリンダに流入させて急動作用を行う。ブレーキ管圧力はブレーキシリンダ圧力と釣り合うまでしか減圧できないので、大気に排出して圧力ゼロまで減圧できるA動作弁と比べて、急動作用としては不十分である。

7. L三動弁では釣合部に安全弁が設けられており、常用ブレーキ時にはブレーキシリンダと連絡して、その圧力を制限する。

L2a-triple-valve

L三動弁の断面図 ※1

(続く)

2023年1月 4日 (水)

自動空気ブレーキと制御弁 ⑨ U自在弁

「自動空気ブレーキと制御弁」 第9回は、日本では電車に使用された「U自在弁」について解説します。

U自在弁

【概要・開発】

WH社が1913年(大正2年)に販売を開始した、旅客車用の制御弁。「自在弁」は「Universal Valve」の翻訳であるが、「万能弁」と訳した資料もある。

先に1907年(明治40年)に開発されたL三動弁は、従来の三動弁から非常部を独立させ、伝達促進・急又込め・階段弛め・非常急動・非常高圧など、一通りの機能を備えた一応の完成形であったが、それを更に発展させた位置づけで、10両(以上)編成に対応する多様な特徴を有していた。

日本ではずっと遅れて、1927年9月に鉄道省が電車の長編成化に向けて採用を検討する試験を行ったが ※17、精緻な構造故に高価で、しかも高度な保守技術を要求されたため、当時の鉄道省の要求水準・技術水準に照らして採用に至らず、国産のA動作弁の開発につながった。

例外的に、関西で高速・長編成を指向した新京阪鉄道・参宮急行電鉄・大阪電気軌道・阪和電気鉄道・大阪市電気局のみが、三菱電機のライセンス生産品を採用した。

後に、保守に手を焼いてA動作弁を使ったAMAなどに改造された車両が少なくなかった中、大阪市では1951年(昭和26年)製作の吊掛車600形まで、この制御弁を採用した。 ※24

【構造・作用】

構造や作用について解説した資料がなく、詳細は不明であるが、白井 昭氏によると概要は以下の通りである。 ※3

特長としては
 ・迅速な指令の伝達
 ・
高感度で安定
 ・
常用ブレーキ後でも確実に非常制動が作用
 ・
常用・非常で異なるブレーキシリンダ圧力を設定
 ・
迅速・均等かつ確実な又込め
 ・
込め不足の保護
 ・
確実な弛め
 ・
非常ブレーキ後の迅速な弛め
などがあり、高い感度・機能とその均等性・安定性を実現するために、常用・非常・伝達促進(急ブレーキ)の各部分を独立させ、三動弁の機構の他に高圧弁・保護弁・弛め弁などを備えている。

具体的には管座の片側に釣合部、もう一方に非常部と急動部を取り付けてあり、釣合部には弛め弁・E6安全弁・締切弁・一段弛め蓋などが、非常部には急動弁・高圧弁・保護弁・パイロット弁などが付属している。また形式によっては、直通ブレーキ部が付属する。

U5-universal-valve_01 U5-universal-valve_02 
大阪市電気局105号(保存車)に搭載のU-5自在弁。昭和6年9月、三菱電機株式會社製。
2007年11月10日、大阪市交通局緑木検車場にて一般公開時に撮影。

外観を見る限り、金属ピストンと滑り弁を使用した二圧式の制御弁で、写真左側(安全弁が見える側)が釣合部と思われる。

【細分形式】

開発当初はU-1・U-2・U-4・U-5や、直通ブレーキ付のU-4-A・U-5-A、電磁ブレーキ付のUE-5などがあり、1915年にはU-12・U-12-A・UE-12などが登場した。更に1940年頃にはU-12-BDが開発され、主に北米大陸の鉄道で多数が使用された。

なお従来の三動弁ではブレーキシリンダのサイズ(内径)別に複数の型式が設計されていたが、U弁では絞りを変更することで異なるサイズのブレーキシリンダに対応できるようになった。この考え方は、国産のA動作弁にも引き継がれている。

【適用ブレーキ方式・車種】

AMU

電車用のブレーキ装置で、国内では以下の事業者・形式に使用された。
 ・
新京阪鉄道             P-6形
 ・
参宮急行電鉄          2200系
 ・
大阪電気軌道          デボ1400形
 ・
阪和電気鉄道          モタ300形、モヨ100形など
 ・
大阪市電気局          100形~600形

いずれも保守の困難性や部品入手上の問題から、1950年代までにはA動作弁を使用したAMA方式への更新、電磁直通ブレーキへの改造(大阪市)が行われ ※24、消滅した。

なお大阪市交通局105号は静態保存車となっており、制御弁もU-5に復元されている。現在動態保存化へ向けて整備中との情報もあり ※25、実現すればAMUブレーキの復活となる。

 

2023年1月 1日 (日)

近所の神社に初詣に行った帰りに撮った、『初詣』ヘッドマーク掲出の阪急電車

2023年1月1日

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2022年12月25日 (日)

自動空気ブレーキと制御弁 ⑧ 電車用 J三動弁

「自動空気ブレーキと制御弁」 第8回は、主に電車に使用された「J三動弁」について解説します。

三動弁 (J triple valve)

【概要・開発】

ゼネラル・エレクトリック社(General Electric Company, GE)が開発したEMU(総括制御電車)用の制御弁。開発時期は不明だが、遅くとも1913年(大正2年)までには開発されていたようである。

機能的にはWH社のM三動弁にほぼ匹敵するが、技術的には劣っていて、AMM程には普及せず、また淘汰されるのも早かった ※3

日本に導入されたのは、白井昭氏によると1914年(大正3年)の京浜線用モハ1形からとされているが、日本国有鉄道百年史及び国鉄電車発達史の記述によれば、同系列には自動兼直通式のAMMが採用された模様で、J三動弁は大正14年度(1925年度)新製電車から採用されたと読み取れる。

前記の通り、当時の鉄道省は技術的に不満であったようで、昭和5年度(1930年度)以降は国産のA動作弁に置き換えられた。しかし短期間とは言え国鉄電車に全面的にJ三動弁が採用されたのは、同じくGEからの電機品(主制御器・主電動機など)の輸入国産化をスムーズに進めるための交換条件であったのかも知れない。

【構造】

ブレーキ管圧力と補助空気溜圧力の関係によってブレーキシリンダ圧力を制御する二圧式制御弁である。ブレーキシリンダ蓋の下部に3本のボルトで取り付けられ、上部に釣合ピストン、下部にはそれと直交する方向に非常ピストンと非常逆止弁、更にその下に制動管逆止弁を持つ。

J5a-triple-valve  ※20

1. 取付座        2. 非常ピストン室           3. 釣合ピストン室蓋
4. 釣合ピストン室   5. 込メ溝プラグ             6. 非常逆止弁室
7. 制動管逆止弁室

【種類】

組み合わせるブレーキシリンダの大きさにより複数の種類があったようであるが、鉄道省ではJ5Aを採用した ※20

【作用】 ※20

ブレーキ管の増減圧に応じて以下の4つの作用を行う。

  • 弛め及び込め
    ブレーキ管内の圧力が上昇すると、釣合ピストンは滑り弁を伴って移動し、ブレーキ管の圧力空気を補助空気溜及び附加空気溜へ込める。
    ブレーキ後にブレーキ管を増圧した時は、釣合ピストンの移動によって、ブレーキ管及び附加空気溜の圧力空気を補助空気溜に込める。同時にブレーキシリンダの圧力空気が排気される。
  • 急制動
    ブレーキ管の減圧が比較的小さい時に取る位置で、釣合ピストンは滑り弁と度合弁を伴って移動し、ブレーキ管及び補助空気溜からブレーキシリンダへの通路を開く。それによりブレーキ管の局部減圧を行う(急ブレーキ作用)と共に、ブレーキシリンダへ圧力空気を込める。
  • 全制動
    ブレーキ管の減圧が大きい時に取る位置で、釣合ピストンは滑り弁と度合弁を伴って急制動位置より更に移動し、ブレーキ管及び補助空気溜からブレーキシリンダへの通路を開く。それによりブレーキ管の局部減圧を行う(急ブレーキ作用)と共に、滑り弁が全開となるため、補助空気溜の圧力空気は十分にブレーキシリンダへ込められる。
  • 制動重なり
    ブレーキ管の減圧が終了し、弁内の滑弁室の圧力がブレーキ管より少し低くなると、釣合ピストンは度合弁を伴って少し戻る。それにより補助空気溜からブレーキシリンダへの空気通路が閉塞され、ブレーキシリンダ圧力は一定に保たれる。
  • 弛め重なり
    自動ブレーキ弁を弛め位置に置いてブレーキ管圧力を増圧し、次に重なり位置に移すと、三動弁は弛め重なり位置を取る。ブレーキ管圧力が補助空気溜圧力より高くなると、釣合ピストンは滑り弁及び度合弁を伴って戻り、弛め込め作用が行われる。その後ブレーキ弁を重なり位置に移し、補助空気溜圧力がブレーキ管圧力より少し高くなると、釣合ピストンは度合弁を伴って移動する。この時度合弁は補助空気溜と附加空気溜を結ぶ通路、及びブレーキシリンダの排気通路を塞ぐことで、ブレーキシリンダ圧力空気の
    一部は排出され、残りはそのまま保たれる。
  • 非常制動
    ブレーキ管の減圧が急激な場合、釣合ピストンは度合バネを圧縮して極端にまで移動する。それにより附加空気溜の圧力空気はブレーキシリンダに流入し、同時にブレーキ管圧力空気も、非常逆止弁を開いて一部がブレーキシリンダに流入する。直後に非常ピストンの両面の圧力が釣り合うため、非常ピストンと非常逆止弁はブレーキ管とブレーキシリンダの連絡を遮断する。

【適用ブレーキ方式・車種】

AVR

GE社のJ三動弁付自動空気ブレーキ装置の呼称で、鉄道省ではWH式にAMJとも呼んだ(国際的には通用しない) P三動弁と同じくF形ブレーキシリンダと組み合わせて使用された。

比較的初期に吐出電磁弁を付加して電磁自動空気ブレーキ(呼称はJE)化されたが、1927年(昭和2年)にはWH社のU自在弁との比較試験が行われ、更に1930年(昭和5年)からは国産のA動作弁に切り替えられた。その後急速にA動作弁への取り替えが行われ、淘汰された。

私鉄では南海電気鉄道が、1921年(大正10年)製作の電4形以降の木造車で、AMJ-Cを標準として採用していた。 ※21

なお少数ながら電気機関車でも使用されており、名鉄デキ600形がAMJである ※21。また岳南鉄道ED29(元豊川鉄道→国鉄)、ED32(元伊那鉄道→国鉄)もAMJとの記述 ※8 があるが、別資料 ※22 ではいずれもAMMとなっており、確証がない。

2022年10月10日 (月)

自動空気ブレーキと制御弁 ⑥ 機関車用14番分配弁

「自動空気ブレーキと制御弁」 第6回は、主に電機機関車とディーゼル機関車に使用された「14番分配弁」について解説します。

 

14番分配弁

【概要・開発】

6番分配弁を、両運転台用に小改良した機関車用制御弁。

電気機関車の実用化により両運転台の機関車が登場したが、その場合どちらの運転台からも同じブレーキ効果を得られるよう、分配弁を車両の中央付近に設ける必要がある。それにより運転台のブレーキ弁から分配弁までの配管が長くなったため、ブレーキ指令に時間が掛かり、また十分なブレーキシリンダ圧力が得られないなどの問題が生じた。

その問題を補償するために開発されたのが№14EL空気ブレーキ装置で、それに使用される分配弁が14番分配弁(№14 Distributing valve)である。№6ET用のK-6ブレーキ弁を小改良したK-14Aブレーキ弁と組み合わせて使用される。

1913年発行のアメリカの解説書には掲載されていないため、それ以降、日本に自動空気ブレーキが導入された1922年までの間にWH社で開発されたと考えられる。日本では1991年製造のEF66 133号機まで新製された。

【構造】

基本的な構造は6番分配弁と同じであるが、ブレーキ管から釣合部の滑り弁を通り制御弁弛め管に通じる通路が設けられ、また作用シリンダ通路を作用シリンダ蓋に回したところが6番分配弁と異なる。このため作用シリンダ蓋に突起が生じており、6番分配弁との外観的な識別点となっている。

また両運転台のため、弛め管と作用シリンダ管をどちらのブレーキ弁に接続するかを切り替える「切替弁」が付属する。切替弁は、第2運転室(後位側)にある切替コックからの圧力空気の有無によって作動する ※14

No14-distribuing-valve-kobe-701
神戸電鉄701号(← ED2001)の14番分配弁。2010年10月3日、鈴蘭台工場一般公開時に撮影

【作用】

基本的な作用も6番分配弁と同じであるが、常用ブレーキ作用において以下の違いがある ※14

  1. 作用シリンダ管が長く、その容積が大きいため、圧力空気室と作用空気室との容積比が当初設計(およそ5対1)と異なって来て、所定の作用シリンダ圧力(≒ブレーキシリンダ圧力)が得られない。そのため自動ブレーキ弁から、不足する空気量を作用シリンダ管に補給するようになっている。

  2. またブレーキ管圧力の一部を、釣合部滑り弁から度合弁通路を経て分配弁弛め管に流入させる。このように予め弛め管の圧力を高めておくのは、自動ブレーキ弁による常用ブレーキ後の弛め・保ち位置で作用シリンダ圧力が弛め管に流入して、ブレーキシリンダ圧力が低下するのを防ぐためである。

但しこれだけの改良では配管延長による性能低下を補償しきれなかったようで、宇田謙吉氏はご自身の体験として、『慣れれば同じとはいうものの、空走時間(運転士の操作からブレーキが効くまでのロス時間)が大きくなるのは恐ろしい。新しい車種に変わるとブレーキ性能は良くなるのが普通なのに、蒸機→電機だけは例外であった。』と書いておられる ※15

【細分形式】

高速化に伴う増圧ブレーキの装備に伴って、作用部に増圧ピストンと逆止弁・電磁弁からなる増圧装置を取り付けた「14番E制御弁乙」がある ※14

【適用ブレーキ方式・車種】

EL-14A

国鉄電気機関車の標準的ブレーキ装置であった。また私鉄においても、中型以上の箱形機を中心に多数採用された。電気式ディーゼル機関車では空気圧縮機を電動式としたため、EL-14Aを採用した(量産機ではDF50)

細分形式としては、以下のようなものがある。

EL-14AS

ブレーキ弁を脚台付きとし、ブレーキ管に非常ブレーキ伝達促進用のE吐出弁(急動弁)を取り付けるなど改良したもので、EF10(17号機以降)・EF56以降のほとんどの形式に採用された。EF81・EF66やED75700などでは、運転台環境改善のためブレーキ弁の脚台を廃止したが、形式はEL14ASのままであった。

なお重連対応形式では、更に元空気溜管の引き通し、釣合管の引き通し(単独ブレーキを次位機関車にも作用させる)、E1締切弁(重連機関車間で分離した場合、釣合管を遮断して次位機関車のブレーキ力喪失を防ぐ)などが追加されている。

EL-14AAS

EL-14ASを2車体用に変更したもので、EH10に採用された。各車体に分配弁を持ち、元空気溜管と釣合管、空気圧縮機同期回路を引き通している。上記重連対応EL-14ASの元となった。

EL14-AR

EL-14Aを回生ブレーキ対応にしたもので、EF11 1~3に採用。4号機とED61は、改良型のEL-14ARSとなった。なおEF16も回生ブレーキ付だが、電空連動を行わないEL-14ASであった。

DL-14A

EL-14Aの空気圧縮機をエンジン駆動に変更したもの。国鉄の量産機ではDD51とDD54に採用された。DD51の半重連型では元空気溜管を、全重連型では更に釣合管を引き通している。

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