アニメーション

2023年3月25日 (土)

新潟国際アニメーション映画祭(その4・まとめ編)

新潟国際アニメーション映画祭。
各プログラムの参加報告を終えて、次は映画祭全体について感想・評価をまとめてみたいと思います。

 

映画祭の目的・狙い

私は広島国際アニメーションフェスティバルの第1回から参加してきたので、映画祭とはああ言うものと言う感覚がありましたが、今回の新潟では、色々と違いを感じました。

もちろん映画祭には色々あるわけですが、その目的となる要素を分類すると、以下のようになるのではないかと思います。

1.制作者・作家に、作品の発表の場を与える。
2.新しい作家を発掘し、育成する。
3.作家やファンが集い、交流する
4.作品や作家をPRする
5.作品の配給先・上映先を見つける

広島国際アニメーションフェスティバルは1・2・3の要素が強く、アマチュア的、アカデミー的な性格が強かったのに対し、新潟国際アニメーション映画祭は4・5の要素が強く、プロフェッショナル的な性格が強いように思います。

それは上映会場の配置を見ても、IDパスを持った関係者席が広く設けられ、一般観客席はどちらかと言うとおまけ的な扱いだったのからも分かります。

アマチュアや学生でも挑戦できる短編作品と違って、長編作品はどうしても商業ベースが前提になりますので、それは正しい事でしょうし、ファンとしてもまた違った楽しみ方ができたと思います。


会場

『新潟市民プラザ』は映画祭のメイン会場で、新潟駅から万代大橋を渡り、歩いて約30分弱。新潟市の旧繁華街・銀行街にある NEXT21と言うビルの6階にあるホールです。
スクリーンは大きく、音響も良かったのですが、多目的ホールゆえ格納式の階段式客席で、とにかく椅子が中途半端。一般席の一番前を取っていたのですが、スクリーンがかなり高くにある事もあって、腰やお尻への負担が大きく、そこで長編を見るというのはかなりの難行苦行でした。
最終日は空きがあった後方の座席に移動してみたのですが、スクリーンとの高さが小さくなる分、姿勢にも無理がなくなり、比較的楽に見る事ができました。次回は後方寄りの座席がお勧めです。

同じくコンペティション部門の作品が上映された『クロスパル新潟』は、メイン会場から歩いて7~8分の所にあります。映画館かと思っていたら、生涯学習施設のホールでした。
座席は良いのですが、スクリーンが小さく、音響もやや貧弱。遮光がもう一つなのが気になりました。市民プラザとの比較で、上映環境を取るか、長時間の座り心地を取るかは悩むところです。

トーク会場の『新潟日報メディアシップ』は、メイン会場から万代大橋を渡って、歩いて20分くらいの所。『古町ルフル広場』は、メイン会場向かいのビルの前にある広場。どちらもオープンスペースなので、音響的にやや聞き取りにくい事がありました。また『古町ルフル広場』は幹線道路沿いなので、車やバスの音が賑やかなのが難点。

レトロスペクティブ部門の作品や、オールナイト上映が行われた『新潟シネウインド』と『T・ジョイ新潟万代』は、いずれも映画館ですが、そこでの上映には行かなかったので、様子は分かりません。

分散した会場での開催だったので、溜まり場的な場所があると良かったなと思います。例えばメイン会場入口の展示スペースに椅子やテーブルが置いてあって、一般観客のみならず、作家さんや関係者が、次の上映やイベントまでの時間を潰す。そして情報交換や交流ができる場所があったら、ただ見て終わりの映画祭にはならないのですが…。

あと会場間の移動は歩きかバスと言う事になりますが、バスの利用は、外来者にはわかりにくいところがあります。利用できる系統番号、下りるバス停の名前、整理券を取るのか、運賃の支払いは先か後かなど、詳しい案内があれば良かったと思います。


プログラム

長編の上映ですし、会場が分散しているので、広島国際アニメーションフェスティバルのように上映の途中で抜けて、別のプログラムを渡り歩くというのは無理です。またプログラムとプログラムとの間の時間があまりないので、食事や移動にも余裕がありません。予めどの作品をどこで見て、食事はここでと言うのを決めておかないとならず、見る側にとっては自由度の少ないプログラムでした。

あと、フォーラムにも面白そうなプログラムがありましたが、残念ながら上映と被っていて、ほとんど参加できませんでした。

チケット

一日券や通し券はなく、全て1プログラム単位の座席指定制です。第1回と言う事もあり、混雑するかなと思っていたので、予め全てチケットを押さえていたのですが、現地へ行ってみると『あのプログラムや良いよ』と言う情報が入ったり、急遽開催のイベントがあったりで、前売りではなく当日購入の方が良かったかなと思ったのでした。

表彰

審査員と一般観客とでは、評価の基準が全然違うので、観客が賞を上げたい作品と実際の受賞作が異なるのは、広島国際アニメーションフェスティバルでも毎回あった事。それだけに次回からは、新潟でも観客賞を創設していただきたいと、強く思います。

運営

初めての開催ですから、ぎこちない部分もありましたが、スタッフの皆さんは一所懸命に、運営に当たっていただいていました。
会場ではフルカラーの日報が配られていたのも素晴らしい。コンペ作品の星取り表はなかなか面白いものでした。
ただ先にも書いたとおり、プロフェッショナル要素の強い映画祭のためか、一般参加者に取っては、やや「放ったらかし感」も感じる運営でした。


最後は「観光・食べ歩き編」で締めますね(笑)

新潟国際アニメーション映画祭(その3)

新潟国際アニメーション映画祭、最終日6日目の参加報告です。
(2日目・3日目はこちら、4日目・5日目はこちら

6日目(3月22日)

前日までにコンペティション作品は全部見終わったので、この日は世界の潮流部門の2作品。

世界の潮流部門
新封神演義・楊戩
監督:Zhao Ji  (2022年、中国)
これが現代の中国長編アニメーションか。実写と見紛うばかりの、完璧なCGが素晴らしい!
でも物語が次々展開し、新しいキャラや技がもの凄い勢いで出て来て、見る方は付いて行けません。
日本のテレビアニメで言えば、2クール分位を2時間に詰め込んだ感じ。
お腹一杯になりました。

世界の潮流部門
手をなくした少女
監督:Sébastien Laudenbach (2016年、フランス)
アートアニメーションの文法で作られた、90分の作品。
興行的にはどうだったのだろう?と、心配になります。
でもこう言う作品を商業ベースで制作できる、フランスの環境も凄いと思います。
 

当初は授賞式まで見ようと思っていたのですが、30分の授賞式+アニソンライブには
どうもそそられないので、ここで切り上げて帰宅となりました。

次は、映画祭全体をちょっとまとめてみます。

2023年3月24日 (金)

新潟国際アニメーション映画祭(その2)

新潟国際アニメーション映画祭、4日目と5日目の参加報告です。
(2日目、3日目はこちら

 

4日目(3月20日)

コンペティション部門
オパール
監督:Alain Bidard [2021年、マルティニーク(フランス)]
マルティニークというのは聞いた事がなかったですが、カリブ海に浮かぶ島で、フランスの海外県だそうです。
重たいテーマを扱った作品。最後の最後で、訳が分かる。

フォーラム
海外における日本のマンガ・アニメの価値づけの状況
この日の予定は2プログラムだけだったので、次の上映までの時間に、ちょっと覗いてみました。
大学の講義室で開催されましたが、ほぼ満席の盛況。
プログラムディレクターの数土さんが基調報告的なお話をされている途中で、残念ながら時間切れ。
最後まで話を聞いてみたかったところですが、最初の方だけでもこの映画祭の目的・狙いが
理解できたような気がします。

コンペティション部門
ネズミたちは天国にいる
監督:Denisa Grimmová / Jan Bubeníček (2021年、チェコ/フランス/ポーランド/スロバキア)
キツネとネズミという、天敵同士のバディもの。チェコの人形アニメの伝統は、健在です。

この日の、コンペティション監督のトークは、『オパール』の Alain Bidard監督。
フランスの植民地であるが故の、制作の苦労、課題の発見などについて多くを語ってくれました。
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5日目(3月21日)

この日は予定の上映が午後からだったので、急遽チケットを買って、午前中のイベントに参加しました。
会場はクロスパル新潟。生涯学習センターのホールです。
椅子は市民プラザより相当良いけれど、スクリーンが小さく、遮光も甘いのが難点。

イベント
こま撮りえいが こまねこ 監督トーク付き
合田監督はNHK『どーも君』の作者でもあり、プロデューサーさんと共に、ほぼ掛け合い漫才。
作品作りにプロデューサーって大事だなと言うのを再確認しました。
終了後に「プロデューサーが監督をアニメートしているみたいですね」と声を掛けたら、
「なかなか動かなくて、アニメートするのが大変です」と返ってきました。
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市民プラザに戻って、午後の上映。

コンペティション部門
劇場版ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン
監督:牧原亮太郎 (2022年、日本)
コンペティション部門で唯一の日本作品。
Netflixで5話に分けて配信している作品の映画版。
かなり悲劇的な内容の物語ですが、映像も音響も素晴らしい。
配信ではなく、大きなスクリーンで音響設備も整った映画館で見るべき作品です。

コンペティション部門
ユニコーン・ウォーズ
監督:Alberto Vázquez (2022年、スペイン/フランス)
かわいいクマさんたちが主役の動物アニメ。ユニコーンや、ウサギ、ネズミなども登場しますが、
それに騙されてはいけない。
写真は、上映前に挨拶したプロデューサーさん(左は通訳さん)
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この日の、コンペティション作品の監督トークは、劇場版『ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン』の牧原監督。
今回はビルの前のオープンスペースが会場のため、前を走るバスや車の音がちょっと騒がしい。
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劇中の歌の歌詞には意味があるのか? 架空の言葉ではないのか?と質問したら、
ちゃんと歌詞に意味があって、ラテン語で歌っていたそうです。

(続く)

2023年3月23日 (木)

新潟国際アニメーション映画祭(その1)

2023年3月17日から22日まで開催された『新潟国際アニメーション映画祭』に行ってきました。

目標は、「コンペティション作品は全部見る」 2日目から最終日の午後まで、作品を見ました。
上映会場は、メイン会場の新潟市民プラザでしたが、座席が収納式階段座席のため、座面や背もたれの角度が良くなく、しかも前の座席ではスクリーンがかなり上にあるため、腰やお尻にかなり負担が掛かりました。但し画質や音響は良好!
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2日目(3月18日)

長編コンペティション部門
四つの悪夢
監督:Rosto (2020年、オランダ/フランス)
一番最初から、なかなかの映像を見せてもらいました。ハードロックに乗せて、結構おどろおどろしい映像が展開する。でも監督は芸術家、音楽家であり映像監督であると言う事で、結構面白く見る事ができました。

長編コンペティション部門
森での出来事
監督:Eric Power (2021年、アメリカ)
紙の質感を生かした切紙アニメ。主人公が、あまり考える事なく一歩を踏み出してしまって、それで物語が展開して行く。日米の文化の違いを考えさせられる作品でもありました。

長編コンペティション部門
カムサ・忘却の井戸
監督:Vinom (2022年、アルジェリア)
アルジェリア初の長編アニメーション作品。輪廻を断ち切ろうとしていたと思ったらそうでなかったり、味方だと思っていたら…と、日本人の感覚では?も多かったけど、映像は綺麗でした。
ただ、ちょっと長すぎ。3割くらい切り詰めたら、物語もよく分かって、見やすい作品になったのでは?

イベント
『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』 片渕監督トーク付き
注意事項が「スクリーンに投影されるパソコン画面だけは撮影禁止」だけだったのは、こう言うイベントとしては珍しい。
次回作についての話が主になるかと思いましたが、『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』の話が中心でした。
最初はトークショーの後に上映と聞こえていましたが、急遽上映を先に変更。そりゃそうですな。トークショーだけで帰ってしまう人が続出しそうだから。

終了は23時近くで、宿がすぐ近く(歩いて3分ほど)で良かったです。

3日目(3月19日)

長編コンペティション部門
愛しのクノール
監督:Mascha Halberstad (2022年、オランダ)
子豚を中心にしたドタバタコメディ。オナラとウンチという、小さな子供が喜ぶネタが満載。話もよくまとまっています。日本での劇場公開が決定したそうです。

世界の潮流部門
明るいほうへ 7作品
監督:陳 晨/趙 易/蘭 茜雅/兪 昆/劉 毛寧/李 念澤/劉 高翔 (2021年、中国)
絵本を元に、現代中国の「愛」をテーマに描く、7作品の短編のオムニバス。こう言う形で公開するのはともかく、長編の映画祭に応募するのはちょっと違うんじゃないか、個別の短編作品として映画祭に出した方が良いんじゃないかと思いました。

長編コンペティション部門
プチ・ニコラ パリがくれた幸せ
監督:Amandine Fredon / Benjamin Massoubre  (2022年、フランス)
元のペン画に淡い色彩を付けて、上手くアニメートしている。なんか見た画だなと思ったら、後の監督トークで『となりの山田くん』の影響を受けてます、と。これも国内での公開が決定したそうです。私としては、グランプリを授与したかった作品。

長編コンペティション部門
めくらやなぎと眠る女
監督:Pierre Földes (2022年、フランス/カナダ/オランダ/ルクセンブルク)
村上春樹の、いくつかの短編小説を元に、東日本大震災直後の東京を舞台に描いた作品。本国では、上映当日が封切りだったとかで、監督さんの代わりにプロデューサーさんが来場していました。
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上映が済んだら、万代橋を渡って、新潟日報メディアシップに移動。『プチ・ニコラ パリがくれた幸せ』の、Amandine Fredon監督と Benjamin Massoubre 監督のトークイベントに参加です。
入場無料なのに、観客は30名くらいか。会場を分散しているので仕方ないけど、ちょっともったいない感じ。
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(続く)

2022年2月19日 (土)

【アニメーション映画】グッバイ、ドン・グリーズ

いしづかあつこ監督の作品 『グッバイ、ドン・グリーズ』を観て来ました。
https://donglees.com/


©Goodbye,DonGlees Partners

もの凄く力を入れて作っていて、作画や音響も丁寧なんだけど、
物語があちこちで飛んで、出て来たエピソードも尻切れトンボのことが多く、
何とも中途半端というか、欲求不満を覚える作品でした。

入口でガイドブックが配布されたんですが、一夜明けて改めて読むと、
作中で名前しか出て来なかった人物にまで、いしづか監督は
細かな物語を設定していたのに驚きました。

これを90分に収めるのは絶対に無理で、恐らくそれが、
観ていて感じた違和感の正体。むしろ「良くこれを90分に
収めました」と讃えるべきかも。

本来有料販売でも良い内容のガイドブックが配布されたのも、
制作側が「補足しないと観客は分からない」と承知していたから
じゃないかな?

無理に?劇場版にしたのは、前作の『宇宙よりも遠い場所』の
評価が高かったのに、テレビシリーズ故に著名映画祭での
受賞ができなかったので、今回角川は、映画祭に出品・受賞できる
作品を作りたかったのかも。

改めてテレビシリーズとして、尺をたっぷり使って、作り直して
欲しい作品です。

2021年5月31日 (月)

塚口サンサン劇場で『ファンタジア』を上映

塚口サンサン劇場で、6月25日から2週間限定で『ファンタジア』を上映するそうです。

上映の度に、ちょっとずつカットされたり改変されてきている作品で、私も見たことがないシーンがありますが、今回はどこが変わるか? サウンドトラック君は健在かな?

2021年5月30日 (日)

お勧めアニメーション作品(海外)「LEGO_ADVENTURE IN THE CITY」

Vimeoで見た短編アニメーション 「LEGO_ADVENTURE IN THE CITY」

https://vimeo.com/127628756

監督はオランダのハーグ在住の Rogier Wieland さん。単なるレゴを使ったアニメーションではなく、実写と上手く組み合わせて、子供の夢の世界を上手く表現しています。とにかく楽しいし、ワクワクします!

 

Short animation "LEGO_ADVENTURE IN THE CITY" seen on Vimeo

The director is Rogier Wieland, who lives in The Hague, the Netherlands. It's not just an animation using Lego, but a good combination with live action to express the dream world of a child well. Anyway, it's fun and exciting!

2021年5月29日 (土)

広島国際アニメーションフェスティバル実行委員会が解散

昨日久し振りに、広島国際アニメーションフェスティバルの公式ホームページを見てみたら、でっかく『これまでたくさんのご声援をありがとうございました! 2021年3月31日をもって、広島国際アニメーションフェスティバル実行委員会は解散しました』との表示が…。

観客の立場とは言え、第1回大会から関わってきた者としては、30年間コツコツと積み上げてきたものが一挙に崩され、否定されたようで、とても悔しいです。

アーカイブは残っていますが、これもいつ閉鎖されるか分かりません。時間を見つけて、ダウンロードして保存しておこうと思います。

 

Hiroshima International Animation Festival Executive Committee Disbanded

After a long absence yesterday, when I looked at the official website of Hiroshima International Animation Festival, I found out that "Thank you for all your support! The Hiroshima International Animation Festival Executive Committee was disbanded on March 31, 2021 」.

From the standpoint of the spectators, as a person who has been involved in the first tournament, it seems that the things that have been accumulated for 30 years have been destroyed and denied at once, which is very disappointing.

The archive remains, but I don't know when it will be closed either. I will find time to download and save it.