自動空気ブレーキと制御弁⑬ B動作弁
自動空気ブレーキと制御弁、第13回目は、試作のみに終わった貨車用 B動作弁について解説します。
B動作弁
【概要・開発】 ※17
1928(昭和8年)年より貨車に本格導入されたK三動弁であるが、急ブレーキ作用が不確実、編成前後でのブレーキのタイミングずれによる大きな衝動の発生、緩解不良など少なからぬ不具合があり、これに代わるものとして1935年(昭和10年)2月より開発が開始された、貨車用の制御弁。
100両編成の貨物列車用として、組み合わせるUブレーキシリンダと共に完成し、性能試験までは行われたようであるが、その後戦時体制への移行に伴い、実用化される事なく終わった。
K三動弁・A動作弁の不具合点を改善すべく開発された制御弁と言えるが、実用化が中止されたのは、ゴムなどの資材の統制などによるものだけでなく、鉄道省内部から、当時の貨車用としては性能が過剰である、調達価格が高くなるなどの意見が強かった事もあったのではないかと思われる。
これによりK三動弁は、1992年(平成4年)にEA1制御弁を使ったCSD空気ブレーキ装置が採用されるまで、種々の問題を抱えながらも約60年間にわたって使い続けられる事になった。
但しこの弁の開発経験は、その後の膜板式制御弁に開発に生かされたものと思われる。
【構造・作用】 ※17
A動作弁の基本設計を元にした二圧式制御弁で、釣合滑り弁以外の弁は膜板(布入りゴム板)化している。
特長としては、
・常用ブレーキ後に非常ブレーキを掛ける事が可能(K)
・常用ブレーキ中に意図しない非常ブレーキは掛からない(A)
・常用・非常ブレーキには衝動が起こらない(K・A)
・ブレーキ・弛め作用が確実(K)
・込めは列車の前後部とも、迅速で確実(K)
・ブレーキシリンダの大きさにかかわらず、同一の弁を使用可能(K)
・釣合ピストン以外の弁を膜板化したため気密が良く、摺り合わせの手間を省ける(K・A)
・各弁の動く方向を枕木方向としてあり、列車の前後衝動が弁の動作に影響しない(K・A)
・釣合滑り弁は抵抗バネを持ち、ブレーキ管圧力の波動による盲動を抑制している(K・A)
・弁本体に配管を取り付けず、弁の着脱が容易(K)
・補助・付加・急動の3空気溜を一体化し、鋼板溶接構造としたため、小型軽量(約 23 kg)(K・A)
などで、(K)(A)はそれぞれ、K三動弁・A動作弁に対する(設計上の)改善点を示す。
【適用ブレーキ方式と車種】
(1) 貨車
BU:
B動作弁とUブレーキシリンダを組み合わせた、一般貨車用空気ブレーキ装置。
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