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2022年9月18日 (日)

自動空気ブレーキと制御弁 ③ K三動弁

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K三動弁

【概要・開発】

貨車用に広く使用された三動弁。現在日本ではK制御弁と呼ばれている。

WH社が1887年頃から供給したH三動弁(ボギー貨車50両編成用)を改良し、80両編成用として1905年より発売したもの ※3。日本ではかなり遅れて1921年5月に、ドイツ・クノール社製の自動空気ブレーキ装置との比較を含め、KCブレーキの実車性能試験を常磐線で実施した。1924年に導入を決定し、1928年頃から本格導入された ※6

国内では日本エヤーブレーキと三菱電機により1970年代までライセンス生産され、国鉄 → JRの一般貨車では1991年度新製分まで、この弁を標準として採用していた。

近年は、弁の摺り合わせなど製造・保守技術の伝承の問題や、保守部品の入手が困難になって来たことから、新製車ではEA-1制御弁を使用したCSD自動空気ブレーキ装置を採用、また既存車ではEF制御弁への取り替えなども行われている。

【構造】

ブレーキ管圧力と補助空気溜圧力の関係によってブレーキシリンダ圧力を制御する二圧式制御弁である。上部に主ピストンと滑弁、下部に非常ピストンと非常弁を持つ。重量は約30 kgf。

外観はP三動弁にそっくりだが、内部は度合弁の形状が異なるほか、減速バネと急動穴を持ち、P三動弁よりも高度な制御ができる。

K-triple-valve-kouzou ※4

1.弁体  2. 主ピストン  3. 滑弁  4. 滑弁バネ  5. 度合弁  6.非常ピストン  7. 非常弁座  8. 非常弁  9. 逆止弁  10. 逆止弁バネ箱  11.逆止弁  12. 塵漉し  13. 気筒蓋  14. 度合棒  15. 度合バネ  排水栓  17. 減速棒  18. 減速バネ  19. 制動筒管  20. 制動管  21.補助空気溜

K2-triple-valve-gaikan K-2三動弁(ホキ1827)

【種類】

給排気容量(空気通路の径)の違いによりK-1とK-2があるが、構造は全く同一である。組み合わせるブレーキシリンダの径によって、使い分けと排気絞り(後述)が定められている ※7

K-triple-valve-shibori

【作用】

ブレーキ管の増減圧に応じて以下の6つの作用を行う。

  1. 全弛め及び込め
    ブレーキ管内の圧力が上昇すると、ブレーキ管より補助空気溜へ圧力空気を供給し(込め)、同時にブレーキシリンダ内の圧力空気を大気中へ吐き出す事でブレーキを弛める。
    ブレーキ管と補助空気溜の圧力差が小さい時に取る位置で、主として列車の後方の三動弁で作用する。


  2. 減速弛め及び込め
    基本的な作用は全弛め及び込めと同じだが、ブレーキ管と補助空気溜の圧力差が比較的大きい時に取る位置で、ブレーキ管から補助空気溜への空気通路を絞って、自分の補助空気溜への給気を抑えて圧力空気を後続車に回す。
    列車前部の車両が込めすぎになるのを防ぎ、編成全体をなるべく均等に込めることを目的としている。


  3. 急制動
    ブレーキ管の減圧速度が比較的小さい時に取る位置で、補助空気溜の圧力空気をブレーキシリンダに供給してブレーキを掛ける。
    なお減圧の初期にブレーキ管の圧力空気をブレーキシリンダに流入させ、ブレーキ管を局部的に減圧することで、ブレーキ指令の伝播速度を向上させる(急ブレーキ作用)


  4. 全制動
    ブレーキ管の減圧速度が比較的大きい時に取る位置で、補助空気溜の圧力空気をブレーキシリンダに供給してブレーキを掛けるのは急制動と同じだが、急ブレーキ作用は行わない。


  5. 重なり
    補助空気溜の圧力空気がブレーキシリンダに供給され、補助空気溜圧力がブレーキシリンダ圧力よりわずかに低くなると、補助空気溜からブレーキシリンダへの空気通路が閉塞され、ブレーキシリンダ圧力は一定に保たれる。
    5.0 kgf/cm2のブレーキ管圧力を1.4 kgf/cm2減圧した時、ブレーキシリンダ圧力が3.6 kgf/cm2になるように、補助空気溜とブレーキシリンダの容積が設定されている。


  6. 非常制動
    ブレーキ管の減圧が急激な場合、補助空気溜の圧力により非常弁を開き、ブレーキ管の圧力空気をブレーキシリンダに流入させることで、大きな局部減圧を起こすと共に、ブレーキシリンダ圧力も若干高くなる。

編成の前後で弛めのタイミングが異なり衝動が発生するのを防止するためと、降坂時に又込めの時間を十分取れるよう、排気管に絞りを設けて、ブレーキシリンダからの排気を遅くしている。このためブレーキが全部弛んでしまうまでに約10秒が必要で、独特な排気音がする原因となっている。

構造上、弛め後に重なり位置を取ることができないため、ブレーキを段階的に弛める「階段弛め」はできない。すなわち弁がブレーキ管の増圧を感知すると、ブレーキは一度に全て弛んでしまう。これは運転士のブレーキ扱いに大きな制約を加えるが、逆にこの特徴をうまく利用して、上り勾配における圧縮引き出しなど高度な運転操作も行われていた。

また大井川鉄道井川線の車両では、ブレーキシリンダからの排気に電磁弁を併用することで、階段弛めを可能にしている ※9

【適用ブレーキ方式・車種】

KC

K三動弁・補助空気溜・ブレーキシリンダを一体に組み立てた(Combined)ユニット式の空気ブレーキ装置で、車両への艤装が容易なことから最も多く使われていた。

Kc-brake-system ※4

1.制動管  2. 制動支管  3. 締切コック  4. 渦巻塵取  5.K三動弁  6. 補助空気溜  7. 弛め弁  8. 制動筒  9.圧力計  10. 車掌弁  11. 肘コック  12. 空気ホース

KD

三動弁と補助空気溜を一体に組み立て、ブレーキシリンダを分離した(Detached)ブレーキ装置。寸法や機器配置の関係でKC型が使えない車両を中心に採用されており、特にタンク車・ホッパ車や、二軸車でも車体長が特に短い車両で多く見られた。

Kd-brake-system-hoki1680
ホキ800形ホキ1680 のKDブレーキ装置。補助空気溜(中央の円筒)の右側にK-2三動弁が取り付けられ、補助空気溜の左向こうに254㎜ブレーキシリンダが見える。赤く塗られているのは排気絞り。2011年3月24日 山陽本線小郡駅

Kd-brake-system-hoki1827
ホキ800形ホキ1827 のKD型ブレーキ装置。ブレーキシリンダだけでなく、補助空気溜も別置きとなっている。2007年11月25日 中央本線八王子駅

KE

高圧ガスタンク車など自重の大きい貨車用として、客車用E型ブレーキシリンダ(305㎜)にK-2制御弁を直接取り付け、補助空気溜を別置きとした方式。

KSD

貨車では、積車時にはブレーキ力が不足して制動距離が伸び、空車時には逆に過剰となって滑走する事が多いため、KD形に荷重検知器とO切替弁を追加し、ブレーキシリンダをD形差動シリンダに置き換えた積空ブレーキ装置。差動ブレーキシリンダの空気通路を切り替えることでピストンの有効面積を変化させ、積車時と空車時で、自動的にブレーキ力を2段階に切り替えることができる。

1964年に製作されたタキ1900形で初めて採用され、これ以降に新製された私有ボギー貨車用空気ブレーキ装置の標準となった。

Ksd-brake-system-o-switching-valve
タキ1900形 タキ71997 の台車に取り付けられた荷重検知器とO切替弁。2021年3月15日、関西本線 四日市駅

KRSD

車体構造上、前後の台車間にブレーキ引棒を渡すことが困難な新ホキ1000形・ホキ10000形に使用された積空ブレーキ装置。台車ごとにブレーキダイヤフラムを持つため、中継弁によりブレーキダイヤフラム圧力を直接変化させてブレーキ力を切り替える。

K三動弁、中継弁、荷重検知器、供給空気溜、2室空気溜、ブレーキダイヤフラムで構成される。

旅客車用:

運転速度の遅い小規模私鉄では、客車にもK三動弁が採用された例がある。三菱石炭鉱業大夕張鉄道の客車にはK-2三動弁が使われていたが、KCかKDかは不明※8。また別府鉄道のハフ5は、KCブレーキ装置を装備した状態で保存されている。

現役車両としては、大井川鐵道井川線の客車がK三動弁を使用している※9。これもKCかKDかは不明。東京ディズニーランドのウェスタンリバー鉄道の客車も、1990年代はK三動弁のような排気音がしていた記憶がある。

Befu-hafu5_20220918161501
別府鉄道 ハフ5 のKCブレーキ装置。三動弁は取り外されているようだ。2005年11月2日、播磨町郷土資料館。

 

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