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2021年9月 2日 (木)

【伊予鉄道】横河原線 小野川橋梁は、摂津鐵道からの引継ぎか

今年の2月、伊予鉄グループ公式TwitterのTweetで、横河原線の平井~梅本間に掛かる小野川橋梁の橋桁には『阪鶴鐵道』の製造銘板があるとの紹介がありました。お恥ずかしい事に横河原線沿線で生まれた私、この事を全く知らなかったのですが、写真を見ると確かに『阪鶴鐵道 汽車課 明治32年製造』とあります。また牛渕団地前~牛渕間に掛かる内川橋梁も同じだそうです。

なぜ、阪鶴鐵道が伊豫鐵道の橋桁を製作したのか?

そもそも阪鶴鐵道が鋼桁の製作能力を備えていたか? ですが、1896年に設立されたばかりで、自社路線も開業前の鉄道会社が、当時ほとんどを輸入に頼っていた鋼材を調達してまで、自社で鋼桁を新規に設計し製作できたとは、ちょっと考えにくいです。

では自社で架設する予定でメーカーから調達したものの、計画変更などで使わなくなった桁を譲渡したのか? でもそれなら、当初から 1067mm用に設計されているはずであり、後にD51も入線した路線に架設予定だったにしては、非常に華奢です。

こう言う時は手元にある『伊豫鐵道電氣株式會社 五十年史』を見るに限るところですが、残念ながら横河原延長線(平井河原~横河原)建設の記事(p158)には、『小野川梅本並に内川各橋梁工事は同年七、八月相次いで落成』以外、詳しい記述がありません。

何かヒントになる記事はないかと、更に五十年史を繰っていたら、『客貨車九輛購入』と言う項目(p217)があり、横河原線延長に伴う貨物・旅客の増加に備えて客貨車の新造を検討していたところ、『阪鶴鐵道會社に軌間變更の爲め不用となるべき車輛あるを聞き之を購入し、明治卅二年一月以來組立塗替に着手し同年三月竣成した。』との記述がありました。阪鶴鐵道で軌間変更をしたのは、旧摂津鐵道から引き継いだ尼ヶ崎~池田間ですから、それらの車両は摂津鐵道からの引継車という事になります。

更にその記事の後に『客貨車廿九輛購入』という項目(p217)があり、直後の明治33年(1900年)に、同じく客車14両と貨車15両の計29両を阪鶴鐵道から購入したことが分かりました。ウィキペディアによれば、摂津鐵道が購入したのは客車・貨車とも各20両だそうですから、伊豫鐵道はそのほとんどを阪鶴鐵道経由で購入したことになります。

阪鶴鐵道とはそれだけ大量の取引をしているので、もう一切合切「旧摂津鐵道のもので使えるものがあれば、何でも買って下さい」状態だったのではないか。例えばレールなども、官鉄規格に合わせるなら重軌条化が必要だったでしょうから、これも伊豫鐵道に譲渡して、平井河原~横河原間に敷設されたことも考えられます。

そこで「改軌で使わなくなった車両は摂津鐵道からの引継車だろうから、同じく使わなくなった軽便鉄道時代の橋桁もあるはず。それを阪鶴鐵道で改造し、製作扱いで伊豫鐵道に納入したのでは?と思い至った次第です。

ではどこに掛かっていた桁なのか? それを調べるため「今昔マップ on the web」で当時に近い地形図で摂津鐵道の路線(尼ヶ崎~池田)を見てみると、それらしい橋梁は現 北伊丹~川西池田間を流れる最明寺川に掛かるものしかありませんでした。両方の旧版地図を同じスケールで比較してみると、小野川より最明寺川の方が橋梁の長さが長いですが、元々最明寺川に4連(以上)で掛かっていた桁を小野川に3連、内川に1連転用したと考えれば、そんなに不自然でもなさそうです。

と言う事で、『伊予鉄横河原線の小野川橋梁・内川橋梁に使われている鋼桁は、摂津鐵道から引き継がれたものである』と言う仮説を立てたのですが、いかがなものでしょう? もしそうであれば、これらの桁は摂津鐵道が尼崎~伊丹・伊丹~小戸村間を開業させた 1893年より前に製作された事になります。

ところで工事経過概要の『小野川梅本並に内川各橋梁工事は同年七、八月相次いで落成、』のところ。「、」が入っていないために「梅本」の文字をスルーしてしまっていたのですが、これは梅本駅の構内、悪社川に掛かる梅本橋梁のことですね。

梅本駅は、1981年に横河原線が15分ヘッド化された際に交換設備新設のために移転しましたので、この際に橋梁も架け替えられたのではないかと思っていました。しかしGoogleストリートビューを見る限り、昔のままの橋桁が残っているようです。コロナ禍が落ち着いたら改めて現地を見に行って、「阪鶴鐵道」の銘板が付いていないか確認したいと思います(ストリートビュー画面奥側の線路の桁は、明らかにこの時に新設されたものです)

決定的なことは何も分からないところではありますが、逆にこれらの橋桁が摂津鐵道由来のものであることを明確に否定する証拠もないように思います。

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