2023年2月 5日 (日)

自動空気ブレーキと制御弁 ⑪ A動作弁(その2)

「自動空気ブレーキと制御弁」 第11回は、国産の代表的な制御弁である「A動作弁」の2回目。A動作弁の種類と作用について、解説します。

 

A動作弁

【種類】

構造で述べたように、動作弁取付座の空気通路に取り付ける絞り栓と、補助空気溜・附加空気溜の容量を変更することで、305 mmと355 mmの2種類のブレーキシリンダに対応できる。そのため細分形式はない。

昭和13年4月より、非常ブレーキ後に弛めが可能になるまでの時間を短縮する(約12秒 → 3~5秒)改良が行われたが ※26、それに伴う形式の変更は行われていない。

【作用】 ※26

最初の込め

各空気溜やブレーキシリンダに圧力空気がない時に、ブレーキ管に圧力空気を込めた時に取る位置で、各空気溜に圧力空気を込める。

釣合ピストン・非常ピストンはそれぞれのピストン室にブレーキ管からの圧力を受けて、滑り弁室側に押し込まれ、圧力空気は補助空気溜・附加空気溜・急動空気溜に込められる。その時、附加空気溜へ送られる空気の一部は高圧弁を閉塞し、附加空気溜への空気がブレーキシリンダに漏れ込むのを防ぐ。

各空気溜が所定の圧力に込められると、逆止弁及び球弁はその座に落ち着いて状態を維持する。

又込め及び弛め

一度減圧したブレーキ管に圧力空気を込める時に取る位置で、各空気溜に圧力空気を込めると共に、釣合度合弁及び釣合滑り弁によりブレーキシリンダの圧力空気を排出して、ブレーキを弛める。

基本的には最初の込めと同じ作用を行うが、附加空気溜の圧力空気も補助空気溜に込められ、込め時間の短縮を図っている(急又込め)

また急動空気溜への空気通路を絞って、補助空気溜と附加空気溜を優先的に込めるようになっている。

急ブレーキ位置

ブレーキ管圧力を比較的緩やかに減圧した時に取る位置で、ブレーキ管の局部減圧を行って後部車両へのブレーキ指令の伝達を促進する(急ブレーキ作用)と共に、常用ブレーキを掛ける。

釣合部では、

1. ブレーキ管の減圧によりピストン室の圧力が減少すると、ピストンはまず釣合ピストン棒と釣合度合弁との隙間(3 mm)だけ移動し、込め溝を塞いで補助空気溜からブレーキ管へ圧力空気が逆流するのを防ぎ、ブレーキ管の減圧を確実にする。

2. その後釣合ピストンは、釣合滑り弁と釣合度合弁を伴って更に動き、度合弁バネに突き当たって止まる。

3. この時急動逆止弁の背面は、釣合滑り弁・釣合度合弁によってブレーキシリンダに通じるので、ブレーキ管の圧力空気は逆止弁を開いて、一部がブレーキシリンダに流入する。これによりブレーキ管の局部減圧を行う。

また釣合滑り弁の通路が開いて、補助空気溜の圧力空気がブレーキシリンダに送られる。

非常部においては、

1. ピストン室の圧力が減少するので、滑り弁室の圧力により球弁は座に落ち着き、ピストンは非常度合弁を伴って、非常度合弁バネに突き当たるまで移動する。

2. この時非常滑り弁と非常度合弁の穴が合致して、ピストン背面及び急動空気溜の圧力空気は徐々に大気に放出される。そのため非常ピストンは非常度合弁バネに突き当たった位置で止まったままとなる。

3. この時非常滑り弁は動かないので、非常ブレーキ作用は行われない。

全ブレーキ位置

急ブレーキ位置と比べてブレーキ管の減圧が早い場合に取る位置で、常用ブレーキを掛けるが、急ブレーキ作用は行わない。

釣合部では、

1. ピストン両面の圧力差が大きいため、ピストンは度合弁バネを圧縮し、急ブレーキの位置を通り越して極端まで動く。

2. この時逆止弁背面への通路は釣合滑り弁で塞がれるため、ブレーキ管の圧力空気はブレーキシリンダへ流入しない。

3. また急ブレーキ位置と同じく釣合滑り弁の通路が開いて、補助空気溜の圧力空気がブレーキシリンダに送られる。

非常部の動きは、急ブレーキ位置の場合と変わらない。

ブレーキ重なり位置

ブレーキ管の減圧を止めた時に取る位置で、ブレーキシリンダ圧力をその時の状態に維持する。

釣合部では、

1. ブレーキ管の減圧が止まってその圧力が一定になっても、補助空気溜の圧力空気はブレーキシリンダに流入し続ける。

2. その結果、釣合滑り弁室圧力(補助空気溜圧力)がピストン室圧力(ブレーキ管圧力)よりも幾分低くなると、釣合ピストンは釣合度合弁を伴って、釣合滑り弁に当たるところまで戻る。

3. この時、各空気通路は閉鎖されて、ブレーキシリンダ圧力は一定に保たれる。

4. また補助空気溜から釣合滑り弁抵抗溝への通路が開き、滑り弁の摺動抵抗を減らして、次の弛め作用を確実にするよう準備される。

なお補助空気溜とブレーキシリンダとの容積比は凡そ3.25対1に設計されている。このため最初490 kPa(5.0kg/cm2に込められたブレーキ管圧力を137 kPa(1.4kg/cm2減圧すると、補助空気溜圧及びブレーキシリンダ圧力は353 kPa(3.6 kgf/cm2となって釣り合う。これを最大減圧量と言い、それ以上の減圧は無効となる。

非常部においては、ブレーキ位置では非常ピストン背面(急動空気溜)の圧力空気が徐々に排出されているが、ブレーキ管の減圧が止まって一定になると、ピストン背面の圧力の方が低くなって、ピストンは滑り弁室側に押し込まれる。これにより急動空気溜圧力は、その時のブレーキ管圧力と釣り合う。

弛め重なり位置

弛めの途中でブレーキ管の増圧を止めた時に取る位置で、各空気溜への圧力空気の込めを停止すると共に、ブレーキシリンダ圧力をその時の状態に維持する。

釣合部では、

1. ブレーキ管の増圧が続く内は弛め位置を取るが、増圧が止まって圧力が一定になっても、附加空気溜の圧力空気は補助空気溜に流入し続ける。

2. その結果、釣合滑り弁室圧力(補助空気溜圧力)が釣合ピストン室圧力(ブレーキ管圧力)よりも幾分高くなると、釣合ピストンは釣合度合弁を伴ってピストン室側へ移動し、釣合滑り弁に当たって止まり、各空気通路を閉鎖する。

非常部においては、ブレーキ管の増圧に伴い非常ピストンは押し込まれて急動空気溜を込めるが、ブレーキ管と急動空気溜の圧力が釣り合った時点で非常ピストンの両面の圧力が釣り合い、球弁が座に落ち着いて、急動空気溜への込めも止まる。

弛め重なり位置において再びブレーキ管圧力が上昇すると、釣合部は再び弛め位置を取り、上昇が止まればまた弛め重なり位置を取る。このようにして、附加空気溜の圧力とブレーキ管圧力が釣り合うまでは、段階的にブレーキを弛めることができる(階段弛め)

非常ブレーキ位置

ブレーキ弁や車掌弁からの非常ブレーキ指令、ブレーキ管の破損や列車の分離などで、常用ブレーキよりも早い速度でブレーキ管の減圧が行われた時に取る位置。

釣合部は全ブレーキ位置と全く同じ作用を行う。但しピストンの動きは、常用ブレーキよりも早く行われる。

非常部では

1. まず非常ピストンが非常度合弁を伴って動き、常用ブレーキ位置を取るため、急動空気溜の圧力空気が排出される。

2. この時ブレーキ管圧力の降下の方が早いので、ピストンの非常滑り弁側の圧力が高まり、ピストンは非常度合弁バネを押し込んで全ブレーキの場合よりわずかに多く移動する。

3. それにより非常度合弁は非常滑り弁の穴を開いて、急動空気溜の圧力空気を急動部の逃しピストン下部に送る。その圧力空気により逃しピストンは押し上げられ、逃し弁を開くので、ブレーキ管の圧力空気は急動部の吐出穴から大気中に放出され、ブレーキ管を急激に減圧する(急動作用)

4. ブレーキ管の急激な減圧は非常部に伝わり、非常ピストンは非常度合弁バネを大きく押し込んで極端まで移動し、非常度合弁及び非常滑り弁に非常位置を取らせる。

5. すると非常滑り弁によって高圧弁背面の圧力空気が大気に放出されるので、高圧弁下部に作用する附加空気溜圧力はバネに打ち勝って高圧弁を開き、附加空気溜の圧力空気はブレーキシリンダに送られる。

6. この時、補助空気溜と附加空気溜の圧力空気が合わさって、ブレーキシリンダ圧力は約441 kPa (5 kgf/cm2まで上昇する。

更に各弁の動作を確実にするために、並行して以下の作用が行われる。

・ 急動空気溜圧力が逃しピストンの下部に送られ、逃しピストンの開きを保つ。

・ 附加空気溜圧力が非常ピストンの背面に導かれ、ピストンの位置を保つと共に、ピストン背面の圧力がブレーキ管に漏れ込むのを防ぐ。

・ 同じく釣合ピストンの位置を保つと共に、ピストン背面の圧力がブレーキ管に漏れ込むのを防ぐ。

・ 逆止弁を弁座に付けて、ブレーキシリンダ圧力がブレーキ管に漏れ込むのを防ぐ。

逃しピストンに作用した空気はピストンにある穴及び逃し溝を通じて、約3~5秒で排出されるので、逃し弁バネにより逃しピストンと逃し弁は押し下げられて元の状態に戻り、非常ブレーキ後の弛めを可能にする。

(第12回へ続く)

2023年1月31日 (火)

自動空気ブレーキと制御弁 ⑩ A動作弁(その1)

「自動空気ブレーキと制御弁」 第10回よりは、国産の代表的な制御弁である「A動作弁」について、複数回に分けて解説します。

A動作弁

【概要・開発】 ※3・17

国産初の旅客車用制御弁で、1960年代以降の文献では「A制御弁」と呼ばれるが、本稿では原則として「A動作弁」に統一する。

鉄道省は自動空気ブレーキを導入するに当たり、客車用には1921年(大正10年)2月よりWH社のPM形(P三動弁)、1923年(大正12年)5月よりクンツェ・クノール社(ドイツ)の客車用P形三動弁、1924年(大正13年)にはWH社の電車用MN形(M-2-C三動弁)、更にWH社のU-5自在弁の試験を行ったが、いずれも採用にならなかった。

その結果、1927年(昭和2年)に至って鉄道省工作局が主幹となって日本の鉄道車両に適した三動弁を開発することになり、日本エヤーブレーキと三菱電機に設計を依頼し、日本エヤーブレーキの案を採用して1928年(昭和3年)8月に正式化されたのがA動作弁である。

A動作弁について解説した文献ではU自在弁を簡略化して(新たに)開発したとするものが多いが、後述するように、WH社のL三動弁(1907年開発)を元にU自在弁の一部機能を盛り込んで改良設計した可能性があり、純粋な国産の制御弁とは言い難いところがある。

鉄道省では、電車には1928年(昭和3年)7月より採用。客車には1929年(昭和4年)5月より取付けを始め1931年(昭和6年)7月までに完了した。気動車には1931年のキハニ36450形より採用。更に一部の大型貨車にも採用され、昭和の初期から30年代に至るまで、国鉄の旅客車はほぼ例外なくA動作弁を搭載していると言っても過言ではない状況であった。私鉄でも電車では1960年代まで、また一部では気動車や電気機関車にも採用された。

1965年(昭和40年)までに次世代の制御弁が開発されてからも、既存形式の増備に当たってはなおA動作弁が採用され続け、廃車発生品の流用ながら、結局は国鉄最後の新製形式キハ31・キハ32・キハ54に至るまでこの弁を採用した。

開発より100年近くになり、最新世代の制御弁や電気指令式ブレーキへの移行により、流石にその数を大幅に減らしているが、現在もなおJRの電車では103系(0番台)・113系・115系・415系、気動車ではキハ32・キハ54(0番台)、貨車ではレール輸送用のチキ5500・チキ6000、私鉄では小湊鐵道キハ200形(一部)などに残存している。

 

【構造】 ※1・4・7・26

ブレーキ管圧力と補助空気溜圧力の関係によってブレーキシリンダ圧力を制御する二圧式制御弁で、金属ピストンを使用した滑り弁式の制御弁である。非常ブレーキの制御を非常部として独立させたのが大きな特徴。材質は鋳鉄製で、重量は約27kg。

釣合ピストンがレール方向になるように取り付けられるのが元々であるが、新性能電車以降のブレーキ制御装置では90度回して枕木方向に取り付けられるようになった。これは、加減速による衝動によって釣合ピストンが無用な動きをしないようにするための対策であると思われる。

従来の三動弁と同じく補助空気溜・附加空気溜とブレーキシリンダが付属するほか、非常ブレーキ制御用の急動空気溜が追加された。

C1-brake-controller
新性能電車用C1ブレーキ制御装置に組み込まれたA動作弁。下の分解図に近い角度での撮影。クモハ101-902。2007年10月24日、鉄道博物館

A-control-valve_structure
A動作弁分解図 ※26

1.非常滑弁室蓋                 2.釣合弁室                          3.釣合滑弁ブシュ               4.釣合滑弁室蓋
5.高圧弁蓋                       6.逆止弁蓋                          7.非常シリンダ蓋                8.釣合シリンダ蓋
9.釣合シリンダ蓋詰座          10.釣合度合棒                      11.釣合度合バネ                 12.釣合ピストンブシュ
13.逃し弁                         14.逃し弁座                          15.逃しピストン蓋               16.逆止弁蓋
17.球弁                           18.非常度合バネ                   19.非常度合棒                   20.非常シリンダ蓋
21.非常シリンダ蓋詰座        22.非常ピストンブシュ            23.非常ピストン                 24.非常滑弁室
25.非常滑弁                     26.非常滑弁バネ                   27.非常滑弁室蓋               28.高圧弁座
29.高圧弁                        30.高圧弁バネ                      31.高圧弁室ブシュ              32.高圧弁蓋詰座
33.高圧弁蓋                     34.非常ピストン                    35.非常ピストン棒              36.非常度合弁
37.非常滑弁                     38.釣合ピストン                    39.釣合度合弁                  40.釣合滑弁


釣合部

釣合部は弁の中段に位置し、水平に置かれた釣合ピストンと、それによって駆動される釣合滑り弁・釣合度合弁・逆止弁・釣合度合バネなどによって構成され、弛め及び込め・急ブレーキ・全ブレーキ・ブレーキ重なり・弛め重なりと言う、常用ブレーキの機能を担う。また非常ブレーキの際は、非常部と共にブレーキ作用を行う。

1. 釣合ピストン

ピストンの両側にはブレーキ管と補助空気溜の圧力が作用し、それらの圧力差によって駆動される。そしてその動きにより釣合滑り弁及び釣合度合弁がそれぞれの弁座を摺動し、各種空気通路を連絡・遮断する。また釣合ピストンの下部には込め溝があり、ピストンによって開閉される。

2. 釣合滑り弁

釣合ピストンによって動かされ、以下の空気通路を構成する。
・ 附加空気溜 ~ 補助空気溜へ
・ ブレーキ管 ~ ブレーキシリンダ
補助空気溜 ~ ブレーキシリンダ
ブレーキシリンダ ~ 大気

また摺動面には抵抗穴という細長い凹みが設けられており、ブレーキ時にはこの中の空気を排出して弁座との間の摩擦抵抗を増し、ブレーキ管圧力の細かな変化により弁が無用に動くことを防ぐ。逆に弛めの際は抵抗穴に圧力空気を込めることで摩擦抵抗を減らし、弛め不良を防ぐ。

3. 釣合度合弁

釣合ピストンによって動かされ、以下の空気通路の連絡を行うほか、前記の釣合滑り弁抵抗穴への空気の給排を行う。
附加空気溜 ~ 補助空気溜
補助空気溜 ~ ブレーキシリンダ
ブレーキシリンダ ~ 大気
ブレーキ管 ~ ブレーキシリンダ

4. 逆止弁

急ブレーキ作用の際に、ブレーキ管圧力空気の一部をブレーキシリンダに込める。

5. 度合弁バネ

急ブレーキ作用と全ブレーキ作用の区別を行うと共に、全ブレーキや非常ブレーキの際に、釣合ピストンが釣合シリンダ蓋詰座に突き当たる際の緩衝器となる。

非常部

非常部は弁の上部にあり、釣合部と直交する形に設けられている。水平に置かれた非常ピストンと、それによって駆動される非常滑り弁・非常度合弁・球弁・非常度合弁バネなどによって構成される。また釣合部の横に、直交するように高圧弁を備える。

1. 非常ピストン

両面にはブレーキ管と急動空気溜の圧力が作用し、その圧力差でピストンが駆動される。常用ブレーキの時は非常度合弁バネに当たるまで、非常ブレーキの時は大きな圧力差により非常度合バネを圧縮して極端まで動き、常用ブレーキと非常ブレーキの区別を行う。

2. 非常滑り弁

非常ブレーキの時以外は込め位置にあり、急動空気溜と滑り弁室を連絡すると共に、附加空気溜の圧力空気を高圧弁の背後に作用させて、附加空気溜とブレーキシリンダとの連絡を遮断している。非常ブレーキの時は、次の連絡を行う。
・ 急動空気溜 ~ 逃しピストン室
・ 高圧弁背面 ~ 大気
・ 附加空気溜 ~ 非常滑り弁室

3. 非常度合弁

常用ブレーキの時は急動空気溜の空気を大気に排出してピストン両面の圧力差を小さくし、非常ピストンが非常位置まで行かないように阻止する。非常ブレーキの時は非常滑り弁が動き出す前に、急動空気溜の空気を逃しピストンに送る。

4. 非常度合弁バネ

常用ブレーキの時に、非常ピストンが非常位置まで移動しないようにする。

5. 球弁

ブレーキ管減圧の際に急動空気溜の空気が逆流しないようにする逆止弁である。

6. 高圧弁

非常滑り弁によってこの弁の背面の空気が排気されると、附加空気溜の圧力空気によって押し上げられ、附加空気溜とブレーキシリンダを連絡する。

急動部

弁の下部にあって、縦型に設けられた逃しピストン・逃し弁などから構成される。非常ブレーキの時のみ、急動空気溜からの圧力空気により作用して、ブレーキ管の圧力空気を大気に排出する。

 

L三動弁とは外観や基本的な弁の配置がよく似ており、A動作弁を開発する際の元となった可能性が大きい。但し以下のような相違はある。 ※1

1. L三動弁は従来の三動弁と同様、対応するブレーキシリンダのサイズ別に設計されていたが、A動作弁ではU自在弁にならって取付座の空気通路に絞り栓を設けることで、複数のサイズのブレーキシリンダに同一の動作弁で対応できる。(L三動弁では、L-1-B: 8・10 in用、L-2-A: 12・14 in用、L-3: 16・18 in用)

2. A動作弁では、釣合滑り弁に抵抗穴が設けられ、滑り弁の意図しない動きを抑制する対策が行われた。

3. L三動弁では非常ブレーキ関係の弁の駆動も補助空気溜圧力によって行うが、A動作弁では独立した急動空気溜の圧力空気で行う。

4. 常用ブレーキと非常ブレーキとの区別は、L三動弁では常用ブレーキと同じ釣合部で行うのに対し、A動作弁では独立した非常部で行う。

5. 弁上部の非常ピストンは、L三動弁ではバイパスピストンとなっており、非常ブレーキ時に補助空気溜圧力により駆動されて、附加空気溜の圧力空気をブレーキシリンダに送るのみの機能となっている。一方A動作弁では非常部として、非常ブレーキの制御を担う。

6. 弁下部の逃しピストンは、L三動弁では非常ピストンと呼ばれる。非常ブレーキ時に補助空気溜の圧力で押し下げられて非常弁を開き、ブレーキ管の圧力空気をブレーキシリンダに流入させて急動作用を行う。ブレーキ管圧力はブレーキシリンダ圧力と釣り合うまでしか減圧できないので、大気に排出して圧力ゼロまで減圧できるA動作弁と比べて、急動作用としては不十分である。

7. L三動弁では釣合部に安全弁が設けられており、常用ブレーキ時にはブレーキシリンダと連絡して、その圧力を制限する。

L2a-triple-valve

L三動弁の断面図 ※1

(続く)

2023年1月25日 (水)

【阪急・JR西日本】大雪の日の朝

大雪で、特にJR西日本の近畿圏のほとんどの路線が運転見合わせになった1月25日、
出勤時に見た様子をご紹介します。

阪急電鉄でも、分岐器にカンテラが焚かれていました。
カンテラの準備がされているのは一冬に1・2回見かけますが、
実際に火が入れられたのは数年振りのように記憶しています。
写真は、西宮北口駅13号線の留置車越しに撮影。
Hankyu_cantera_20230125

大阪駅で、昨夜から停車したままの新快速米原行きが、なお停車中。
向こうには、第二場内信号機で抑止中の後続列車が。
Jrwest_osaka-station_20230125

大阪駅11番線には、EF81 113 [敦] が抑止中でした。
Jrwest_ef81-113_20230125

2023年1月10日 (火)

【阪急】2023年1月10日朝の西宮車庫

・C#7003×6Rが、庫内A4番線で『休車』札を掲出して留置中

・庫外にC#7030×2Rが、転落防止幌を取り付けたまま、単独で留置中

2023年1月 4日 (水)

自動空気ブレーキと制御弁 ⑨ U自在弁

「自動空気ブレーキと制御弁」 第9回は、日本では電車に使用された「U自在弁」について解説します。

U自在弁

【概要・開発】

WH社が1913年(大正2年)に販売を開始した、旅客車用の制御弁。「自在弁」は「Universal Valve」の翻訳であるが、「万能弁」と訳した資料もある。

先に1907年(明治40年)に開発されたL三動弁は、従来の三動弁から非常部を独立させ、伝達促進・急又込め・階段弛め・非常急動・非常高圧など、一通りの機能を備えた一応の完成形であったが、それを更に発展させた位置づけで、10両(以上)編成に対応する多様な特徴を有していた。

日本ではずっと遅れて、1927年9月に鉄道省が電車の長編成化に向けて採用を検討する試験を行ったが ※17、精緻な構造故に高価で、しかも高度な保守技術を要求されたため、当時の鉄道省の要求水準・技術水準に照らして採用に至らず、国産のA動作弁の開発につながった。

例外的に、関西で高速・長編成を指向した新京阪鉄道・参宮急行電鉄・大阪電気軌道・阪和電気鉄道・大阪市電気局のみが、三菱電機のライセンス生産品を採用した。

後に、保守に手を焼いてA動作弁を使ったAMAなどに改造された車両が少なくなかった中、大阪市では1951年(昭和26年)製作の吊掛車600形まで、この制御弁を採用した。 ※24

【構造・作用】

構造や作用について解説した資料がなく、詳細は不明であるが、白井 昭氏によると概要は以下の通りである。 ※3

特長としては
 ・迅速な指令の伝達
 ・
高感度で安定
 ・
常用ブレーキ後でも確実に非常制動が作用
 ・
常用・非常で異なるブレーキシリンダ圧力を設定
 ・
迅速・均等かつ確実な又込め
 ・
込め不足の保護
 ・
確実な弛め
 ・
非常ブレーキ後の迅速な弛め
などがあり、高い感度・機能とその均等性・安定性を実現するために、常用・非常・伝達促進(急ブレーキ)の各部分を独立させ、三動弁の機構の他に高圧弁・保護弁・弛め弁などを備えている。

具体的には管座の片側に釣合部、もう一方に非常部と急動部を取り付けてあり、釣合部には弛め弁・E6安全弁・締切弁・一段弛め蓋などが、非常部には急動弁・高圧弁・保護弁・パイロット弁などが付属している。また形式によっては、直通ブレーキ部が付属する。

U5-universal-valve_01 U5-universal-valve_02 
大阪市電気局105号(保存車)に搭載のU-5自在弁。昭和6年9月、三菱電機株式會社製。
2007年11月10日、大阪市交通局緑木検車場にて一般公開時に撮影。

外観を見る限り、金属ピストンと滑り弁を使用した二圧式の制御弁で、写真左側(安全弁が見える側)が釣合部と思われる。

【細分形式】

開発当初はU-1・U-2・U-4・U-5や、直通ブレーキ付のU-4-A・U-5-A、電磁ブレーキ付のUE-5などがあり、1915年にはU-12・U-12-A・UE-12などが登場した。更に1940年頃にはU-12-BDが開発され、主に北米大陸の鉄道で多数が使用された。

なお従来の三動弁ではブレーキシリンダのサイズ(内径)別に複数の型式が設計されていたが、U弁では絞りを変更することで異なるサイズのブレーキシリンダに対応できるようになった。この考え方は、国産のA動作弁にも引き継がれている。

【適用ブレーキ方式・車種】

AMU

電車用のブレーキ装置で、国内では以下の事業者・形式に使用された。
 ・
新京阪鉄道             P-6形
 ・
参宮急行電鉄          2200系
 ・
大阪電気軌道          デボ1400形
 ・
阪和電気鉄道          モタ300形、モヨ100形など
 ・
大阪市電気局          100形~600形

いずれも保守の困難性や部品入手上の問題から、1950年代までにはA動作弁を使用したAMA方式への更新、電磁直通ブレーキへの改造(大阪市)が行われ ※24、消滅した。

なお大阪市交通局105号は静態保存車となっており、制御弁もU-5に復元されている。現在動態保存化へ向けて整備中との情報もあり ※25、実現すればAMUブレーキの復活となる。

 

2023年1月 1日 (日)

近所の神社に初詣に行った帰りに撮った、『初詣』ヘッドマーク掲出の阪急電車

2023年1月1日

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Hankyu_8003_20230101

 

2022年12月25日 (日)

自動空気ブレーキと制御弁 ⑧ 電車用 J三動弁

「自動空気ブレーキと制御弁」 第8回は、主に電車に使用された「J三動弁」について解説します。

三動弁 (J triple valve)

【概要・開発】

ゼネラル・エレクトリック社(General Electric Company, GE)が開発したEMU(総括制御電車)用の制御弁。開発時期は不明だが、遅くとも1913年(大正2年)までには開発されていたようである。

機能的にはWH社のM三動弁にほぼ匹敵するが、技術的には劣っていて、AMM程には普及せず、また淘汰されるのも早かった ※3

日本に導入されたのは、白井昭氏によると1914年(大正3年)の京浜線用モハ1形からとされているが、日本国有鉄道百年史及び国鉄電車発達史の記述によれば、同系列には自動兼直通式のAMMが採用された模様で、J三動弁は大正14年度(1925年度)新製電車から採用されたと読み取れる。

前記の通り、当時の鉄道省は技術的に不満であったようで、昭和5年度(1930年度)以降は国産のA動作弁に置き換えられた。しかし短期間とは言え国鉄電車に全面的にJ三動弁が採用されたのは、同じくGEからの電機品(主制御器・主電動機など)の輸入国産化をスムーズに進めるための交換条件であったのかも知れない。

【構造】

ブレーキ管圧力と補助空気溜圧力の関係によってブレーキシリンダ圧力を制御する二圧式制御弁である。ブレーキシリンダ蓋の下部に3本のボルトで取り付けられ、上部に釣合ピストン、下部にはそれと直交する方向に非常ピストンと非常逆止弁、更にその下に制動管逆止弁を持つ。

J5a-triple-valve  ※20

1. 取付座        2. 非常ピストン室           3. 釣合ピストン室蓋
4. 釣合ピストン室   5. 込メ溝プラグ             6. 非常逆止弁室
7. 制動管逆止弁室

【種類】

組み合わせるブレーキシリンダの大きさにより複数の種類があったようであるが、鉄道省ではJ5Aを採用した ※20

【作用】 ※20

ブレーキ管の増減圧に応じて以下の4つの作用を行う。

  • 弛め及び込め
    ブレーキ管内の圧力が上昇すると、釣合ピストンは滑り弁を伴って移動し、ブレーキ管の圧力空気を補助空気溜及び附加空気溜へ込める。
    ブレーキ後にブレーキ管を増圧した時は、釣合ピストンの移動によって、ブレーキ管及び附加空気溜の圧力空気を補助空気溜に込める。同時にブレーキシリンダの圧力空気が排気される。
  • 急制動
    ブレーキ管の減圧が比較的小さい時に取る位置で、釣合ピストンは滑り弁と度合弁を伴って移動し、ブレーキ管及び補助空気溜からブレーキシリンダへの通路を開く。それによりブレーキ管の局部減圧を行う(急ブレーキ作用)と共に、ブレーキシリンダへ圧力空気を込める。
  • 全制動
    ブレーキ管の減圧が大きい時に取る位置で、釣合ピストンは滑り弁と度合弁を伴って急制動位置より更に移動し、ブレーキ管及び補助空気溜からブレーキシリンダへの通路を開く。それによりブレーキ管の局部減圧を行う(急ブレーキ作用)と共に、滑り弁が全開となるため、補助空気溜の圧力空気は十分にブレーキシリンダへ込められる。
  • 制動重なり
    ブレーキ管の減圧が終了し、弁内の滑弁室の圧力がブレーキ管より少し低くなると、釣合ピストンは度合弁を伴って少し戻る。それにより補助空気溜からブレーキシリンダへの空気通路が閉塞され、ブレーキシリンダ圧力は一定に保たれる。
  • 弛め重なり
    自動ブレーキ弁を弛め位置に置いてブレーキ管圧力を増圧し、次に重なり位置に移すと、三動弁は弛め重なり位置を取る。ブレーキ管圧力が補助空気溜圧力より高くなると、釣合ピストンは滑り弁及び度合弁を伴って戻り、弛め込め作用が行われる。その後ブレーキ弁を重なり位置に移し、補助空気溜圧力がブレーキ管圧力より少し高くなると、釣合ピストンは度合弁を伴って移動する。この時度合弁は補助空気溜と附加空気溜を結ぶ通路、及びブレーキシリンダの排気通路を塞ぐことで、ブレーキシリンダ圧力空気の
    一部は排出され、残りはそのまま保たれる。
  • 非常制動
    ブレーキ管の減圧が急激な場合、釣合ピストンは度合バネを圧縮して極端にまで移動する。それにより附加空気溜の圧力空気はブレーキシリンダに流入し、同時にブレーキ管圧力空気も、非常逆止弁を開いて一部がブレーキシリンダに流入する。直後に非常ピストンの両面の圧力が釣り合うため、非常ピストンと非常逆止弁はブレーキ管とブレーキシリンダの連絡を遮断する。

【適用ブレーキ方式・車種】

AVR

GE社のJ三動弁付自動空気ブレーキ装置の呼称で、鉄道省ではWH式にAMJとも呼んだ(国際的には通用しない) P三動弁と同じくF形ブレーキシリンダと組み合わせて使用された。

比較的初期に吐出電磁弁を付加して電磁自動空気ブレーキ(呼称はJE)化されたが、1927年(昭和2年)にはWH社のU自在弁との比較試験が行われ、更に1930年(昭和5年)からは国産のA動作弁に切り替えられた。その後急速にA動作弁への取り替えが行われ、淘汰された。

私鉄では南海電気鉄道が、1921年(大正10年)製作の電4形以降の木造車で、AMJ-Cを標準として採用していた。 ※21

なお少数ながら電気機関車でも使用されており、名鉄デキ600形がAMJである ※21。また岳南鉄道ED29(元豊川鉄道→国鉄)、ED32(元伊那鉄道→国鉄)もAMJとの記述 ※8 があるが、別資料 ※22 ではいずれもAMMとなっており、確証がない。

2022年12月 4日 (日)

【録音】京福電鉄西院駅の踏切警報電鐘

Sai-starion-electric-bell 

京福電鉄嵐山本線の西院駅構内に今も残る、四条通踏切の電鐘式警報器の警報音を
YouTubeで公開しました。https://youtu.be/EUZcvpvOz1U

2022年11月26日に、嵐山方面行き乗場側で録音したものです。

警報器は、銘板によると昭和38年5月、京三製作所製です。
先に四条大宮行き電車が通過し、続いて嵐山行き電車が到着します。

2022年11月23日 (水)

自動空気ブレーキと制御弁 ⑦ 電車用 M三動弁

「自動空気ブレーキと制御弁」 第7回は、主に電車に使用された「M三動弁」について解説します。

M三動弁 (M triple valve)

【概要・開発】

WH社が1907年(明治40年)に開発した ※3、比較的短編成のEMU(総括制御電車)用の制御弁。急ブレーキ(伝達促進)、急又込め、階段弛めの機能を有する。

性能的には中途半端であるが、実用的で中小私鉄でも保守ができる自動空気ブレーキ装置であったため、日本では1920年代から第二次世界大戦後にA動作弁や電磁直通ブレーキに置き換わるまでの間、私鉄電車の標準的な自動空気ブレーキ装置として多数が採用された。

なお客車や5両編成以上の電車用には、同年に開発された、より高級な機能を持つ「L三動弁」が普及したが、日本には導入されなかった ※3

【種類】

適用するブレーキシリンダの寸法別に M-1、M-2-A、M-2-Bがある ※16

M-1       : 200mm 及び 255mmシリンダ用
M-2-A    : 305mm シリンダ用
        M2a-triple-valve
M-2-B    : 355mm 及び 405mm シリンダ用
        M2b-triple-valve

なお1924年(大正13年)に鉄道省が行った、P三動弁に代わる客車用三動弁を選定するための試験・試運転に、WH社はM-2-Cを提案したが ※17、その詳細については資料を発見できていない。

【構造】

ブレーキ管圧力と補助空気溜圧力の関係によってブレーキシリンダ圧力を制御する二圧式制御弁である。M-1及び M-2-Aでは水平に作用する主ピストンと滑り弁・度合弁が主要部であり、上部にそれらに直交する形で小型のバイパス弁が、また下部には垂直に更に小型の逆止弁が配置される。

M-2-Bでは主ピストンが垂直に配置され、逆にバイパスピストンと逆止弁は水平となっているほか、滑り弁座には M-2-Aよりポートが余分にあって、非常制動後に主ピストンを弛め位置に来させるようになっている ※16
M2a-triple-valve_2 M2b-triple-valve_2

直通空気ブレーキを併設しているのが基本であったが、長編成化に伴い自動ブレーキ専用に移行した。原則として制御管(3両編成まで)または元空気溜管(4両編成以上)の引き通しが設けられる。引き通しを有しない場合は、代わって附加空気溜を設けるようである。

【作用】

直通ブレーキを含め、以下の作用を行う ※16

  1. 弛め込め
    ブレーキ管内の圧力が上昇すると、主ピストンは滑り弁側に移動(M-2-Bの場合は下降)し、ブレーキ管の圧力空気は込め溝を経て、また逆止弁を開いて補助空気溜を込める。逆止弁は、補助空気溜の空気がブレーキ管に逆流するのを防ぐ。更に制御管の空気も、三動弁の別の通路を経て補助空気溜を込める。このように3つの経路があるため、補助空気溜の込めは急速に行われる(急又込め)
    補助空気溜の圧力はブレーキシリンダ圧力の下降に比例するので、ブレーキの弛めが終わるときには、補助空気溜が十分込められている。
    ブレーキシリンダの圧力空気は №14複式逆止弁を経て、ブレーキ弁を経て排気される。

  2. 直通制動
    ブレーキ弁ハンドルを直通ブレーキ位置に動かすと、ブレーキ管は閉じられると共に、制御管の圧力空気は直通空気管を通じて №15複式逆止弁に至り、使用しないブレーキ弁の通路を閉じる。次に №14複式逆止弁を通じて補助空気溜と連絡する。補助空気溜の圧力空気は №14複式逆止弁のピストンを押し、込め溝を通ってブレーキシリンダに送られてブレーキが掛かる。

  3. 直通制動重なり
    ブレーキ弁ハンドルを直通制動重なり位置に移すと、制御管から直通空気管への通路が閉じられる。№14複式逆止弁は補助空気溜とブレーキシリンダとの連絡を絶ち、込め溝を閉塞するので、ブレーキシリンダ圧力は維持される。
    この時ブレーキ管は、ブレーキ弁を通じて制御管と連絡しており、圧力空気が込められる。

  4. 直通制動弛め
    ブレーキ弁ハンドルを弛め位置に移すと、ブレーキシリンダの圧力空気は №14複式逆止弁、直通空気管を経て、ブレーキ弁より大気へ排出される。

  5. 自動制動
    ブレーキ弁ハンドルを自動制動位置に置くと、ブレーキ管の減圧により三動弁の主ピストンは度合弁側に動き(M-2-Bでは上昇)、込め溝を遮断すると共に、度合弁によりブレーキ管と補助空気溜との通路を遮断する。
    次に滑り弁の動きにより、補助空気溜の空気が №14複式逆止弁を経てブレーキシリンダへ供給される。同時に急制動孔が開き、ブレーキ管の圧力空気は逆止弁を開いてブレーキシリンダに入る。
    これによる若干のブレーキ管圧力の減圧により、常用ブレーキの伝達促進(急ブレーキ作用)が行われるが、その効果は大きくない。

  6. 全制動
    ブレーキ管の減圧が早い場合は、三動弁の急制動孔は開かず、ブレーキ管の圧力空気はブレーキシリンダへ流入しない。そのため急ブレーキ作用は起こらない。

  7. 制動重なり
    制動作用によって補助空気溜の圧力空気がブレーキシリンダに送られ、補助空気溜圧力がブレーキ管圧力より少し低くなると、主ピストンは制動重なり位置に動き、各通路は閉塞される。
    更にブレーキ管を減圧すると、三動弁は再び自動制動位置を取り、補助空気溜よりブレーキシリンダへの給気を行う。ブレーキ管圧力を約 5 kg/㎠まで減圧すると、ブレーキシリンダ圧力と釣り合うので、それ以上の減圧は無効となる。

  8. 弛め重なり
    三動弁が弛め位置を取っている時、補助空気溜圧力がブレーキ管圧力より少し高くなるまで込められると、主ピストンは弛め重なり位置を取り、各通路は閉塞される。この作用は、ブレーキ管圧力が 5 kg/㎠に込められるまで、繰り返し行う事ができる(階段弛め)

  9. 非常制動
    ブレーキ弁を非常制動位置に置くと、ブレーキ管が急激に減圧されるので、補助空気溜圧力空気がブレーキシリンダに流入して減圧されるよりもブレーキ管の減圧の方が早い。そのため補助空気溜の圧力により主ピストンは極端にまで押されて非常制動位置を取る。
    この時補助空気溜の圧力空気はブレーキシリンダに流入すると共に、バイパス弁を開いて制御管の圧力空気をブレーキシリンダに流入させる。これによりブレーキシリンダ圧力は、常用ブレーキ時より高い圧力となる(非常高圧)

なお常用制動と非常制動を同じ主ピストンで制御するため、常用ブレーキ中には非常ブレーキを掛けられない、非常ブレーキの偶発が起こるなどの問題があった。

【適用ブレーキ方式・車種】

AMM-C:

編成内に制御管を引き通して補助空気溜を込める方式で、3両編成以下で運用される電車に採用された。

鉄道省では、大正3年(1914年)に京浜線向けとして竣工した デロハ6130形・デハ6340形に導入されたのが最初のようであるが、大正14年度新製車から J5A三動弁を使い、直通ブレーキを廃止した AVR自動空気ブレーキ装置に切り替えられた ※18

私鉄でも少し遅れて導入が始まったようで、東武鉄道 デ1形(大正13年=1924年)などが初期の導入例である。

Amm-moha1035_main-part
鉄道省モハ1035(←デハ33509)の AMM-C自動空気ブレーキ装置 主要部
2011年3月15日 リニア鉄道館

Amm-moha1035_triple-valve
同上 M-2-A三動弁
2011年3月15日 リニア鉄道館

Amm-tokyo-chikatetsu-1001_main-part
東京地下鉄道 1001号の AMM自動空気ブレーキ装置 主要部分
2007年9月1日 地下鉄博物館

Amm-tokyo-chikatetsu-1001_triple-valve
同上 M-2-B三動弁
2007年9月1日 地下鉄博物館

AMM-R:

4両編成以上で運用される車両に適用される方式で、AMM-Cに空気圧縮機の同期装置を追加し、編成内各車両での空気圧縮機の稼働を均等化させたもの。長編成化に伴い電磁吐出を追加し、AMME-Rとした事業者もある。

第二次世界大戦後は A動作弁を使用した AMAに切り替える事業者が増加したが、AMM-Cを含めてローカル私鉄では、昭和38年(1963年)頃まで新製例が見られる ※8

AMMR-R:

相模鉄道で使用された日立式電磁直通ブレーキ装置の、諸元表での呼称 ※19。自動ブレーキ部分は AMM-Rに中継弁を追加したものと思われる。同方式を搭載した車両は モヤ700型として残存しているが、種車の 7000系は後年 E制御弁に更新されており(厚木駅で実見)、同形式も更新済みである可能性が高い。

AMM(電気機関車):

AMM自動空気ブレーキ装置は直通ブレーキを持つため機関車用にも適しており、また保守が容易であったため、私鉄の小型電気機関車でも採用された。諸元表から ED26(富岩鉄道→国鉄→越後交通)、ED28(豊川鉄道→国鉄→山形交通・遠州鉄道)、ED32(伊那電鉄→国鉄→岳南鉄道)などで確認できる ※8。この内、遠州鉄道のED28はなお現役である。

2022年10月10日 (月)

自動空気ブレーキと制御弁 ⑥ 機関車用14番分配弁

「自動空気ブレーキと制御弁」 第6回は、主に電機機関車とディーゼル機関車に使用された「14番分配弁」について解説します。

 

14番分配弁

【概要・開発】

6番分配弁を、両運転台用に小改良した機関車用制御弁。

電気機関車の実用化により両運転台の機関車が登場したが、その場合どちらの運転台からも同じブレーキ効果を得られるよう、分配弁を車両の中央付近に設ける必要がある。それにより運転台のブレーキ弁から分配弁までの配管が長くなったため、ブレーキ指令に時間が掛かり、また十分なブレーキシリンダ圧力が得られないなどの問題が生じた。

その問題を補償するために開発されたのが№14EL空気ブレーキ装置で、それに使用される分配弁が14番分配弁(№14 Distributing valve)である。№6ET用のK-6ブレーキ弁を小改良したK-14Aブレーキ弁と組み合わせて使用される。

1913年発行のアメリカの解説書には掲載されていないため、それ以降、日本に自動空気ブレーキが導入された1922年までの間にWH社で開発されたと考えられる。日本では1991年製造のEF66 133号機まで新製された。

【構造】

基本的な構造は6番分配弁と同じであるが、ブレーキ管から釣合部の滑り弁を通り制御弁弛め管に通じる通路が設けられ、また作用シリンダ通路を作用シリンダ蓋に回したところが6番分配弁と異なる。このため作用シリンダ蓋に突起が生じており、6番分配弁との外観的な識別点となっている。

また両運転台のため、弛め管と作用シリンダ管をどちらのブレーキ弁に接続するかを切り替える「切替弁」が付属する。切替弁は、第2運転室(後位側)にある切替コックからの圧力空気の有無によって作動する ※14

No14-distribuing-valve-kobe-701
神戸電鉄701号(← ED2001)の14番分配弁。2010年10月3日、鈴蘭台工場一般公開時に撮影

【作用】

基本的な作用も6番分配弁と同じであるが、常用ブレーキ作用において以下の違いがある ※14

  1. 作用シリンダ管が長く、その容積が大きいため、圧力空気室と作用空気室との容積比が当初設計(およそ5対1)と異なって来て、所定の作用シリンダ圧力(≒ブレーキシリンダ圧力)が得られない。そのため自動ブレーキ弁から、不足する空気量を作用シリンダ管に補給するようになっている。

  2. またブレーキ管圧力の一部を、釣合部滑り弁から度合弁通路を経て分配弁弛め管に流入させる。このように予め弛め管の圧力を高めておくのは、自動ブレーキ弁による常用ブレーキ後の弛め・保ち位置で作用シリンダ圧力が弛め管に流入して、ブレーキシリンダ圧力が低下するのを防ぐためである。

但しこれだけの改良では配管延長による性能低下を補償しきれなかったようで、宇田謙吉氏はご自身の体験として、『慣れれば同じとはいうものの、空走時間(運転士の操作からブレーキが効くまでのロス時間)が大きくなるのは恐ろしい。新しい車種に変わるとブレーキ性能は良くなるのが普通なのに、蒸機→電機だけは例外であった。』と書いておられる ※15

【細分形式】

高速化に伴う増圧ブレーキの装備に伴って、作用部に増圧ピストンと逆止弁・電磁弁からなる増圧装置を取り付けた「14番E制御弁乙」がある ※14

【適用ブレーキ方式・車種】

EL-14A

国鉄電気機関車の標準的ブレーキ装置であった。また私鉄においても、中型以上の箱形機を中心に多数採用された。電気式ディーゼル機関車では空気圧縮機を電動式としたため、EL-14Aを採用した(量産機ではDF50)

細分形式としては、以下のようなものがある。

EL-14AS

ブレーキ弁を脚台付きとし、ブレーキ管に非常ブレーキ伝達促進用のE吐出弁(急動弁)を取り付けるなど改良したもので、EF10(17号機以降)・EF56以降のほとんどの形式に採用された。EF81・EF66やED75700などでは、運転台環境改善のためブレーキ弁の脚台を廃止したが、形式はEL14ASのままであった。

なお重連対応形式では、更に元空気溜管の引き通し、釣合管の引き通し(単独ブレーキを次位機関車にも作用させる)、E1締切弁(重連機関車間で分離した場合、釣合管を遮断して次位機関車のブレーキ力喪失を防ぐ)などが追加されている。

EL-14AAS

EL-14ASを2車体用に変更したもので、EH10に採用された。各車体に分配弁を持ち、元空気溜管と釣合管、空気圧縮機同期回路を引き通している。上記重連対応EL-14ASの元となった。

EL14-AR

EL-14Aを回生ブレーキ対応にしたもので、EF11 1~3に採用。4号機とED61は、改良型のEL-14ARSとなった。なおEF16も回生ブレーキ付だが、電空連動を行わないEL-14ASであった。

DL-14A

EL-14Aの空気圧縮機をエンジン駆動に変更したもの。国鉄の量産機ではDD51とDD54に採用された。DD51の半重連型では元空気溜管を、全重連型では更に釣合管を引き通している。

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